石見銀山 群言堂

暮らす旅

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島根県石見銀山

石見銀山・生活観光
古民家に宿泊する
中長期滞在におすすめの宿「伊藤家」

緑深い山間に赤茶色の瓦屋根が並ぶ町並み。島根県大田市大森町──別称・石見銀山の地で、「生活観光」を体験できる宿に、あらたな選択肢が加わりました。

先人の生きてきた過去から本質を理解し、未来からの視点で創造する「復古創新」という考えのもと、町内の民家「伊藤家」をこれからの旅のスタイル──家族で地域に滞在できる暮らし体験「保育園留学®」やワーケーション等──にあわせて、石見銀山に滞在したい旅人が気軽に泊まれる宿として蘇らせました。

宿のコンセプトは、“快適さとすこしの遊び心”。伊藤家にはパッチワークの建具や借景窓といった、この町の暮らしをたのしむ工夫を散りばめています。

石見銀山・大森町の魅力は、歴史と文化が残る町並みに暮らしがあり、町民が暮らしを楽しんでいるところ。

伊藤家で、町の暮らしぶりを是非感じてみてください。

本記事では、伊藤家の再生を主導した石見銀山生活観光研究所の松場忠に話を聞きました。各部屋、設備とともに、こだわりや想いをご紹介します。

取材・文・写真 / エドゥカーレ
(小松崎拓郎)

泊まれる部屋

島根県大田市大森町は山あいにたたずむ人口400人ほどの小さな町。出雲空港から公共交通機関でおよそ2時間の道中を経て、バス停(大森)を下車し、町並みに分け入った通り沿いに伊藤家はあります。

駐車場は2台分を完備

宿は、島根県石見銀山を拠点とする石見銀山生活観光研究所が、地元の職人とともに再生しました。

石見銀山生活観光研究所について:
「石見銀山生活観光研究所(※1)」という観光の会社を2019年に立ち上げて、コンセプトとして「生活観光」を掲げました。観光という言葉は手あかがついてしまっていて、当時は「なんで観光なの?」と散々言われました。でも語源を考えると、観光の意義はみなさんのイメージとは異なる部分にあると思いました。私たちはこの町での暮らしや生き方、ライフスタイルこそ「光っているものとして見てもらう」ために、あえて観光という言葉を使いたいと思っています。

参考:なぜ今「生活観光」なのか?石見銀山生活観光研究所 松場忠×発酵デザインラボ 小倉ヒラク|前編

部屋数は、全3室。寝室に広々としたダブルベッドが2台並んでいる1号室と2号室は最大4人が宿泊可能。ダブルベッドが1台しつらえてあるシングルの3号室は夫婦やカップル、またお1人での滞在に適した部屋です。

1号室は最大4名で宿泊可能。
2号室は最大4名で宿泊可能。
3号室は最大2名で宿泊可能。

木目とねずみ色を基調とした、落ち着いた佇まいで品のある寝室。伊藤家は、全寝室がダブルベッドです。ひとり旅はもちろん、夫婦や親子がおなじベッドでも快適にお休みいただけます。

全室、裸足でも歩きやすい松の床板。「ちょっと凹んでも、味わいになるのが木材のいいところ」。

古民家に泊まる際に気になる水回り。伊藤家の風呂場、トイレ、洗面台は、古民家といえどストレスなくお過ごしいただけるように造りました。風呂場は、足を伸ばして湯に浸かることができます。石見銀山の岩肌を眺めるバスタイムも、伊藤家ならではの体験です。

お風呂にゆとりをもたせた理由は、家族で入浴したときに「楽しかった」「お風呂よかったね」と言ってもらいたいから。

続いてダイニングキッチンをご紹介。

冷蔵庫や調理用品などの設備が充実しているダイニングキッチンでは、町内や市街地で買い出した地元の食材を使って、自宅で過ごすように料理できます。

電子レンジや炊飯器、トースターも完備。左官職人が作ったキッチンも見どころの一つ。

これからの旅の形は中長期的なものになると考えて、テーブルと椅子の高さはゆったりとくつろぐことも、デスクワークにもぴったりのものを設えました。

食事中や作業中は、目の前に銀山川、その向こうに町並みとそれを囲う里山、そして青空が見えるでしょう。

1号室の2階からは清々しい町の風景が見える。「気持ちのいい場所で長く過ごしてもらいたい」という想いから、リビングダイニングは2階に設計。

耳をすませば、川のせせらぎや登下校する町の子どもたちの楽しげな声が聞こえてくるはず。ふと、穏やかな日常に心が和らぎます。

湿度の高い石見銀山だから、快適な湿度に保ってくれる珪藻土の壁に。

幸せな相乗効果が生まれてくる宿に

石見銀山群言堂グループ 本社

もともと伊藤家は、二階に按摩業をいとなむ伊藤さんというおばあさんが暮らしていました。一階は石見銀山生活観光研究所の親会社に当たる石見銀山群言堂グループの資材倉庫でした。

その後、伊藤さんが老人ホームに入居してからは手つかずのままの空き家に。いずれ朽ちていく空き家を放置しておくのは石見銀山の未来のためにならないと考え、このたび伊藤家を宿として蘇らせることにしました。

今回の古民家再生を主導した松場忠は、2019年に石見銀山生活観光研究所を設立。「地域には幸せな相乗効果が生まれてくる宿が必要だ」と語ります。

松場忠
1984年、佐賀県鹿島市出身。文化服装学院シューズデザイン科を卒業後、靴職人に。2012年に妻の実家である石見銀山生活文化研究所に入社。2019年より、株式会社石見銀山生活観光研究所を設立、2022年に株式会社石見銀山群言堂グループの代表に就任。伊藤家のほかに二棟の宿泊施設を運営している。

「アルベルゴ・ディフーゾという、地域に散らばっている空き家を活用し、建物単体ではなく地域一帯を点在型ホテルとするイタリア発祥の取り組みがあります。これから伊藤家は、他郷阿部家や山田家といった大森町に点在する宿のなかでも、地域への気軽な地域の玄関口としての役割を担います。これまでの石見銀山には、気軽に中長期滞在できる宿泊施設のキャパシティが少なかったんですね。伊藤家のような宿を増やしていけると石見銀山にいろんな関わりしろが生まれますよね。地域の外の人たちとの関わりしろを増やしていければ、おのずと幸せな相乗効果が生まれてくると考えています」

参考:【石見銀山・生活観光】暮らす宿・他郷阿部家|日本の美しい生活文化を語り継ぐ宿

快適で、すこしの遊び心のある住空間

伊藤家は、石見銀山群言堂グループで13軒目の古民家再生となります。

古民家再生にあたって「凝ったことをしているわけではないけれど、気を遣っているからこそ現れる品格を大事にしたい」と松場忠は話します。

「伊藤家で長期滞在していただいても困ることがないように、過不足なく生活用品が揃っていて、食器も意識して選んでいます。1週間から3週間の滞在期間で、山田家とおなじように保育園留学®で活用してもらえるように大きな冷蔵庫も完備させました。湿度の高い石見銀山で長く過ごしていただいた際にストレスを軽減できるように、壁には珪藻土、洗濯乾燥機も取り付けています。すごいものはなかなか作れないかもしれないけれど、残念だと思うポイントをなくすことはできると思うんです」

参考:【島根県・観光】石見銀山に泊まる|普段通りの自分で暮らすように過ごす。江戸末期の一棟貸し宿「山田家」

古民家改装のコンセプトは、ほどよく快適に過ごせることと、古民家ならではの遊び心。風呂場の岩壁を望む借景窓だけではなく、伊藤家には遊び心が散りばめられています。

例えばそれは、古い家の使われなくなったガラスを集めてつくられたパッチワークの建具。朝や夕暮れ時の光が差し込む頃は、光の美しさに目を奪われるはず。

風呂場や玄関に使われているタイルは、じつは隣町のタイル工場で、色ブレが大きくて廃材になったものです。

自分たちのペースで過ごしてほしい

これまで大森町では、町にある宿の特性上、中長期で滞在しづらかったと言えるかもしれません。伊藤家を宿として蘇らせることは、石見銀山での暮らす旅の選択肢が増えるということでもあります。

最後に、伊藤家を利用するお客様にどんなふうに過ごしてほしいか、松場忠に聞きました。

「大森町は、エンタメ性というかハレの文化が際立つ町ではないと思っています。いっぽうでこの町には暮らしがあって、ケの文化がある。日常の些細なことに感動していただくには少し時間が必要だと思うんです。

『ゆったり過ごせた』とか『のんびりできてよかった』とか『なんだか心地よかった』とか、宿泊するお客様が自分たちのペースで過ごせて、なんとなく行き届いていて快適で、不快な思いをしなかったということを大事にしたいなと。

一般的に旅行から帰ってきたら、どっと疲れることが多いと思います。伊藤家で過ごしたら、少し元気になってもらって帰っていただく。そういう生活観光をしていただきたいですね」

「伊藤家」 詳細

住所:〒694-0305 島根県大田市大森町
電話:0854890022
予約方法:現在は保育園留学®専用宿として運営しています。詳しくはそちらにお申込みください。公式サイト:https://guide.hoikuen-ryugaku.com/oda-omori/lp

提供されるアメニティ・設備

■バスルーム・洗面室
・ヘアドライヤー
・ヘアアイロン
・シャンプー/コンディショナー
・ボディソープ

■寝室とランドリー
・無料洗濯機/ガス乾燥機(共用ランドリールーム)
・必需品 / タオル、シーツ、トイレットペーパー
・冷暖房

■プライバシーと安全
・消火器
・救急箱

■インターネット
・Wi-Fi

■キッチンとダイニング
・キッチン
・冷蔵庫
・電子レンジ
・基本的な調理器具(鍋、フライパン、油、塩・こしょう)
・食器&カトラリー(ボウル、箸、皿、カップなど)
・コーヒーメーカー:ハンドドリップコーヒー
・トースター

■駐車スペースとその他施設
・敷地内無料駐車場 2台分(要予約/限りがございますのでご予約時にお申し付けください)

■地図
 https://goo.gl/maps/ehqjMGpqY6Aeiz2RA

■ハウスルール
 チェックイン時刻:15:00
 チェックアウト時刻:10:00

■備考
・荷物預かりOK / チェックイン前やチェックアウト後、身軽にぶらつきたいゲストに対応
・長期滞在OK / 28泊以上のステイもできます