私たちが暮らし、働いている石見銀山大森町は、山に囲まれ、木でつくられた家々が建ち並んでいます。そして、この町を訪れた人の多くは、「ほっとする」「なつかしい」「気がやすまる」と言ってくださいます。それは、ここに住む私たちも同じで、たくさんの自然に触れたり、人と助け合ったりしながら、家族とともにやすらかな時間を過ごしながら暮らしています。
日本中の多くの田舎と同じように、この町もかつては過疎が進み、もしかしたら、住むことができなくなっていたかもしれません。そうならなかった理由はいくつもあるでしょうが、いちばん大きいのは、ここで暮らしてきた人たちが強い思いで、ここでの暮らし方を守ろうとしてきたからだと思います。
私たちも同じように思い、ここに会社を構え、事業を展開しています。私たちの事業は、ものを作り、売ってはいますが、実は「生き方、暮らし方」を人々に提案しているのだと考えています。それは、日本人の多くが経済的な成長の過程でいつしか優先順位を下げてしまった価値観を、改めて見直すような事業です。
今の社会では、多くの人々は働きすぎ、疲れて、不安を抱えているようにも思います。そんな今だからこそ、もっと木と土を見て、触れて、ゆるやかに過ごす時間が、誰にとっても必要です
大事なことは、幸せでいること。そのために、ふるさとみたいな田舎での時間や、やさしい気持ちで生きていく機会を、少しずつでも増やしていくのが良いと思います。
それが「新しい生活様式」「ニューノーマル」になると良いなと、私たちは思っています。
そして田舎に住む私たちは、「消費する、捨てる文化」よりも「拾う、補う文化」を大事にして、これまでの暮らしをしっかりと守り、互いに感謝し、こころに余裕のある生き方をこれからも続けていきたいと思います。
(この文章は、2020年7月に山陰中央新報に掲載されたものです。)