群言堂には何人か、半分社員というような、ふつうとは少し違う関わり方をしている人がいます。鈴木良拓も、その一人。彼は、里山の植物から色を抽出して布を染める仕事に挑戦したいと「里山パレット」の企画を立ち上げて植物採集を担当していますし、デザインやイラストの仕事もしています。そしてもうひとつ別の仕事が「SUZUKI FARMS」で、町内で群言堂の暮らす宿「他郷阿部家」の食卓に並ぶ野菜をつくっています。つまり、群言堂と農家の二足のわらじです。
群言堂には何人か、半分社員というような、ふつうとは少し違う関わり方をしている人がいます。鈴木良拓も、その一人。彼は、里山の植物から色を抽出して布を染める仕事に挑戦したいと「里山パレット」の企画を立ち上げて植物採集を担当していますし、デザインやイラストの仕事もしています。そしてもうひとつ別の仕事が「SUZUKI FARMS」で、町内で群言堂の暮らす宿「他郷阿部家」の食卓に並ぶ野菜をつくっています。つまり、群言堂と農家の二足のわらじです。
故郷・福島で代々続く農家の家に生まれ、幼少の頃から野山に親しんで育つ。学生時代は、植物から繊維をとって織ったり、草木染をしたりという手仕事に熱中。2012年に石見銀山生活文化研究所に入社。現在は、群言堂の活動のかたわら、近隣の不耕作地を借りてつくった畑で、自然農にいそしんでいる。
近くの畑の獲れたてですから「他郷阿部家」の料理で使われている野菜は新鮮で美味しいと評判ですが、そのつくり方はちょっと変わっています。彼の野菜は「小さな森のような畑」でつくられていて、レタスも人参もキャベツも混ぜこぜにした種を、花咲かじいさんのようにばら撒いて混生させた大胆なものです。土中の微生物の活発なはたらきや、多様な生命が共存してせめぎ合う関係が、土壌も野菜も強くするのだとか。彼いわく「自然界をお手本に畑をつくっていきたいと考えています。自然のなかにはいろいろな植物が混生していますよね。タンポポの野原があると思っても、実際にはタンポポだけじゃなくタデ科やイネ科、マメ科の植物も生えています。」というわけで、鈴木の畑は多様な植物が共生する不思議な畑です。
畑づくりに取り組むまでは彼も、農業は土を耕し、畝を立て、種蒔きをして肥料をあげるもの、という一般的なイメージしかありませんでした。しかし、だんだん自然の森と畑との違いが気になりはじめ、放棄された畑や田んぼは途端に草に覆われ、木々が育って森になることから森も畑も本質的には変わらないと思うようになりました。畑にも森と同じように生き物が暮らしていて、たくさんの生き死にが繰り返されている自然の一部。その考えに至ってから、一度つくった畝を壊さずに使い続け、草をどんどん敷き、外から肥料を持ち込まずに草の力で野菜を育てていくという手法に挑戦して、ビニール資材や農薬ももちろん使わず、なるべく自然に沿ったやり方で畑をつくるようにしています。
家畜との共存も意識していて、畑の周りにはヤギやニワトリも暮らしています。ヤギは人が入れないような斜面の草を上手に食べて管理してくれます。畑の隣にはニワトリたちがいて、くず米や刈り取った草を食べて育っています。ニワトリは卵を生んでくれて、自給自足の暮らしに少し近づき、手に入る食材が増えて、料理のバリエーションが増えるので、とても楽しいそうです。また、この畑を通じて地域との関わりも深まり、たとえばベビーリーフが溢れるほど生えてきたら、地域の人や子どもたちに好きなだけ獲ってもらったりして喜ばれています。鈴木の姿を見ていると、かつて何かで 読んだ「遊びを深めると仕事になる。仕事を極めれば遊びになる。」という言葉が思い出されて、勇気づけられます。
「私の働き方は、都会では難しいと思います。朝起きたら畑仕事をして、ちょっと雨が降ってきたら家に入ってものづくりをやる。こういうバランスを自分で取ることができる環境は大森町ならではかな、と思います。」と語る鈴木ですが、彼が農業を始めたのは「里山パレット」に使う染料を集めるなかで地域のおじちゃんたちと出会い、山菜の在り処を教えてもらったり、キノコを一緒に採りに行ったことがきっかけだそうです。自分たちの畑でつくった食材も、みんなで味わうと特に楽しく、嬉しいと思うようになったからとのこと。
そしてまた、町内で休耕田が目立つようになってきたことも理由だそうです。農家さんたちが米作りをやめ、どんどん引退していく。暮らしの風景の一部だった田園が消え、雑草で覆われていく。そんな姿を見ているととても悲しくて、景観を維持するためにも田んぼを使いたいと思い、農家としての仕事を増やして、今の形になったようです。
このように、彼の「小さな森のような畑」は、たくさんの生き物たちを見守りながら、みんなでわいわい楽しむ「食」だけに留まらず、私たちにさまざまなことを与えてくれています。
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