「職人の技」が土地の育んだ風土を映し出す、群言堂の空間づくり|島根の作り手たち

日常の中で、自然に触れられるひとときを大切にしていますか? 

木や土、石など、豊穣な土地が育んだ素材がもたらす魅力は、心を和ませ、暮らしに豊かなひとときをもたらしてくれます。

群言堂が大切にしているのは、日常の中でふと自然を感じる瞬間を創ること。その想いを「私の里の、はな / とり / かぜ / つき」という言葉に込め、デザインテーマとしています。

「私の里の、はな/とり/かぜ/つき」について:島根県のものづくりの現場より:プロローグ|島根の作り手たち

素材から自然の息吹や地域の風土を感じていただけるよう、島根の職人たちと共に彼らの技を活かし、島根の自然を映し出す空間を表現したのがKITTE大阪に新しく開店した「石見銀山 群言堂 暮らしの旅へ」です。

いつもの群言堂の店舗と違うのは、「暮らしの旅へ。」が加えられていること。そこには私たちの暮らす島根の生活文化を知っていただきたいという思いが、品揃えだけでなく、店舗の素材にも込められているのです。

陰(かげ)の表現に、隠れた美しさが浮かび上がる

島根県が位置する山陰地方は、四季のはっきりとした湿潤な気候で、自然環境がもたらす奥深い景観が特徴です。四季折々に表情を変える山々や柔らかな光がつくる影の美しさが、どこか静謐で心を落ち着かせてくれます。

今回の新しい店舗では、山陰・島根の持つ陰影美を取り入れた落ち着きのある空間を演出しています。

山陰の「陰」が指すのは、色や形はあっても目には見えない状態のこと。山陰の素材には、光の加減によって浮かび上がる陰影があり、その奥深さが独特の魅力を持っています。

明るくてなんでも見えやすい環境が普通だからこそ、あえて光のトーンを少し落とすことで、本来の自然な色彩や輪郭が浮かびあがります。

竹林のおもかげが浮かぶ竹の間仕切り

そんな島根らしい景色を描き出すべく作られたのが、竹の間仕切りです。

組子細工の建具づくりに熱い想いを注いできた吉原木工所の想いに触れたことで、空間を仕切る間仕切りの新しいあり方を提案。人の手を加えることを最小限に抑えながら竹の美しい造形を表現するべく、スライスした竹を職人の技術で間仕切りとして組みあげました。

店内では、見る角度や照明によってシルエットを変える竹林のおもかげが浮かびます。

[木のもの]の作り手

吉原木工所(よしはらもっこうしょ)

細く挽き割った木に溝や角度をつけ、小さな木片をパズルのように組み合わせて紋様を描く「組子細工」。浜田市の「吉原木工所」は、大量生産にはない品質とサービスの提供を目指し、「職人のものづくり」にこだわり続ける木工所です。真摯な姿勢や高品質が支持されて、国内外から高い評価を得ています。
代表の吉原敬司さんは、「伝統に、変われる強さを」という信念を持つ職人。棚田が広がる山あいの工場を改修し、生まれ育った土地でチームワークを重んじながら創意工夫を続けています。

穏やかで温かみのある風景を映し出す、石州タイル

山陰島根では、独特の赤茶色の屋根が連なる、穏やかで温かみのある風景が広がっています。

店内でも、亀谷窯業さんが一つひとつ型抜きをする一つ一つ手で型を取ってつくり上げるタイルが、光の当たり方や見る角度によって様々な表情を見せ、この風景を彷彿とさせてくれるでしょう。

計算の尽くされた職人の技による歪みの少なさと、窯で焼き上げることで生まれる温度差による色むらが魅力です。その自然な風合いが、島根の景観が持つ柔らかな雰囲気を空間に引き出しています。

[土のもの]の作り手

亀谷窯業(かめだにようぎょう)

「亀谷窯業」は石州瓦の伝統を守り続ける窯元です。九代目である亀谷典生さんは、伝統的な来待釉薬を使った製品にこだわり、島根県の来待石と陶土を用いて、高品質な石州瓦を作っています。現在、来待釉薬だけの石州瓦を焼いているのは亀谷窯業のみ。貴重な「石州本来待瓦」の風合いとデザイン性に着目した亀谷さんは、この伝統技術を使って瓦タイルを考案しました。瓦タイルを壁面に使用する斬新なアイデアは、住環境を守る機能性と新たなスタイルで、空間にアクセントを添えています。

島根のしっとりとした空気を運んでくれる、石州福光石

群言堂が日々ものづくりと向き合っている大森町。

この町を歩いていると、川底に大きな岩盤が露出している光景をご覧いただけるでしょう。

巨大な岩盤の上に土の層が重なり、その上に森や川が広がり、地盤となる石もまた自然から授かった足元の宝です。

石州福光石は、この地域特有の柔らかさのある石材で、四季折々の表情を見せてくれます。

水分を含む性質があるため、特に雨上がりには独特の風合いを帯び、年月とともに味わいを増していくのも魅力の一つです。店内にはこの石を床材として採用しました。

一般的に「石の床」と聞くと冷たく重厚な空間を思い浮かべますが、石州福光石を使ったこの場は柔らかく穏やかな空気をまとい、島根のしっとりとした風土を感じさせる空間に仕上がっています。

[石のもの]の作り手

坪内石材店(つぼうちせきざいてん)

古くから地域の暮らしのために、多様な用途で活用された石州福光石。石見銀山の近くにある羅漢寺の五百羅漢像も、石州福光石が使用されています。現在、島根県で石州福光石を採掘しているのは、室町時代から450年以上続く「坪内石材店」だけです。こちらでは、原石の挽き割りから表面の仕上げ、特殊な加工も一手に引き受けています。石州福光石を使った石材の床は、福光石の美しさと耐久性を最大限に引き出し、細部までこだわった仕上がりが特徴です。

自然の息づかいを感じる、素朴でおおらかな木工什器

山と森林に恵まれた島根県。その森林面積は52万haで、高知県、岐阜県、長野県についで全国第4位を誇ります。

店内には、そんな土地で育まれた一本一本の魅力に真摯に向き合い、活かしているSUKIMONOさんが手がけたテーブルや藍染めソファなどの木工什器が用いられています。

その魅力は必要以上に手を加えない作り手の意志と、什器の自然な佇まい。

一見マイナスに見える木のくぼみや節までも見事な味わいとして生かされ、自然とのつながりを感じさせてくれます。

[木のもの]の作り手

SUKIMONO(すきもの)

日本の伝統技術と現代的なデザインを融合したブランド「SUKIMONO」。名前を意味する「数寄(すき)」とは、物事の趣きを理解し、楽しむ心を指します。代表の平下さんは、「無為自然」をテーマに島根県の素材を積極的に活用し、家具や建築、雑貨で日本独自の価値観や美意識を表現しています。コンセプト店では、テーブルやカウンター、和紙を入れる引き出し、椅子、リーディングヌックの藍染めソファを製作。ずっとそこに置いてあったかのように空間に自然となじみ、私たちの緊張をほぐしてくれます。

「自然のまま」を活かす空間に

今回の空間づくりでは、群言堂が慣れ親しんでいる島根の素材と、島根の職人が日々用いている技を活かしました。必要最小限の手を加えることで、空間をしつらえています。

たとえば、照明には石見神楽の面作りの技法を取り入れました。壁紙には、藍染めで山の風景を表現した石州和紙を使用しています。こうした工夫を通して、さまざまな形で島根の魅力を感じていただけます。

私たちが大切にしているのは、商品だけでなく、店舗全体から島根の美しさをお届けすること。ご来店いただいた際には、店内で過ごすひとときの中で「私の里の、はな/とり/かぜ/つき」の気配を楽しんでいただければと思っています。

石見銀山 群言堂 暮らしの旅へ KITTE大阪

営業時間 11:00 〜 20:00
住所 大阪府大阪市北区梅田3-2-2 KITTE大阪 3F
電話 06-6690-8721

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