かつて石見銀山で銀を掘っていた鉱夫たちが、潰した梅の実を布にくるんで口に当て、鉱毒から身を守っていたことから、大森町には「梅」が多く植えられています。冬の間に剪定した枝をいただいてチップ状にし、染料にしています。
忍耐 忠実 高潔
枝
さんごいろ
「梅」には果実をとるものや、花を観賞するためのものなど、多くの品種がある。高さは10mに達するが、3~5m程度で栽培されることが多く、1月から4月に白色や紅色の花を咲かせ、古くから春を告げる木として親しまれている。6〜7月には実がなり、食用にされる。あまり土質を選ばない性質で、刈り込みにも強く、日本では北海道から沖縄まで各地で栽培され、全国に多くの梅園がある。
一説には弥生時代に中国から渡来したと言われるが、遣唐使が持ち帰ったという説もある。庭木として親しまれ、江戸時代からは果実の栽培も行われていた。果実は主に食用として利用されるが、未熟な青梅は中毒を起こす可能性があるので生食はできない。熟し切っていない青梅を梅酒に、完熟梅を梅干しなどに加工するほか、梅酢、梅醤やジャム、菓子や、料理などに用いられる。強い酸味が特徴で、有機酸を多く含むので、健康食品としても販売されている。
大森町の代表的な果樹「梅」。鉱山として栄えていた時代に植えられていた梅の木は、もう存在して無いのかもしれないが、文化としては残っていて、今も町内のあちこちに植えられているのを見ることができる。毎年6月頃には梅雨の合間を縫って梅干しや梅シロップを仕込む梅仕事が待っている。梅の実を干すための晴れ間が待ち遠しい。この時期はどのご家庭もそんな感じではなかろうか。
ちなみに、梅の実はもちろんだが、梅の葉や枝も「酸っぱい」のはご存じだろうか。飼っていたヤギがこの梅の葉が大好物で、なんでそんなに魅力的なのだろうと一緒に齧ったことがあるが、「梅」のように葉っぱも酸っぱい。確かにクセになりそうな味であった。ヤギが好んで食べるものは、だいたい美味しかったり毒がなかったりするので、昔の人々も家畜に教えてもらいながら、食べられる植物やそうでない植物を判断していたのだろうかなと考えるのであった。
植物採集人・鈴木
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