山野の日当たりの良いところに生える、つる性の「葛」。長く伸ばした茎からは葛布(くずふ)の原料となる繊維が取れ、根からは葛粉(くずこ)が取れます。葉は草食動物が好んで食べます。自生している「葛」の茎と葉を刈り取って染料にしています。
芯の強さ 治癒
枝と葉
はいじろ
つるが地面を這って絡みつくものを求め、樹木などほかのものに巻きついて10m以上に伸びる。繁茂力が高く、広い範囲で根を張る。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の根になり、長さは1.5m、径は20cmにもなる。花は夏から秋で、濃紺紫色のものや、白、淡い桃色のものなどがある。花の時期が終わると、長さ15 cmほどある褐色の剛毛に被われた扁平な果実を結ぶ。
日本では古くから天然繊維の材料として活用され、食用や薬用としても利用されてきた。つるを煮て発酵させ取りだした丈夫な繊維で編んだ葛布は、平安時代から作られていたとされる。
根に含まれる繊維を取り除いてでんぷんだけにしたものが葛粉で、熱を加えて溶かして透明か半透明にして、葛切りや葛餅などの和菓子材料や、料理のとろみ付けに用いる。また、湯で溶かした葛湯(くずゆ)は解熱などの薬として使われ、根を乾燥させたものは葛根(かっこん)として、漢方薬になっている。群言堂の「里茶」にも、葛の葉がブレンドされたものがある。
道路脇の斜面や山の周辺の使われていない畑や荒地をマントのように覆う「葛」。一見すると、厄介者のような見え方をするが、とても有用で根も、花も、葉も使い道があり、まったく無駄がない。大森町の近隣の西田という地区は、かつて「西田葛」という葛粉の産地でもあったように、この地とも関わりの深い植物と言える。ちなみに有名な吉野葛と肩を並べるような生産量があったとも記されているようだ。
植物生態学的にはこの「葛」を中心とする草原を覆うような植物たちはマント群落と呼ばれ、役割があって存在していると言われている。植物生態学者の宮脇昭氏の著書の中では、「日本の畑や、空き地というのは人の手が入らなければいずれ森に還る。人の手で耕されたような草の生えていなかった場所にも、時間と共に背の低い雑草が生える。数年経つと人の背丈ほどの色んな草で覆われ草原になる。陽の当たる草原には、日光を好む陽樹と呼ばれるクルミやタラノキ、ノイバラへと遷移し、やがて「葛」を含むマント群落が傷口に絆創膏を貼るように覆うとその足元からは、隠樹と呼ばれる幼木の時には日陰で育つような森の木々が生まれる。こうして時間をかけて本来の森の姿へ還る。」というように書かれていた(思い出しながらなので意訳)。「葛」という植物は、「森の修復役」なのだ。
植物採集人・鈴木
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