ミックスナッツやお菓子の材料としておなじみの「くるみ」。スーパーなどでは年中手に入りますが、本来は秋に実る木の実です。
けれど、「そのまま食べたり、お菓子に入れたりする以外の使いみちがわからない」と思われる方もいるのではないでしょうか。
石見銀山のある町、島根県大森町の豊かな自然と歴史に包まれた暮らす宿・他郷阿部家の食卓をお届けする連載「阿部家のひと皿」。
そこで初回は、季節の食材でつくる「くるみ味噌」の簡単レシピを料理人の小野寺拓郎さんに教えてもらいました。
シンプルな素材の組み合わせでつくることができる「くるみ味噌」は、様々な食材にあわせて楽しめる万能調味料です。
ぜひお試しください。
※ご自宅の近くに山や森がある方は、鬼ぐるみが生えているかもしれません。ぜひ収穫にも挑戦してみてください。収穫方法は「くるみの採り方」からご覧ください。
1.くるみをすりつぶす。
POINT:ごろっとしたくるみの食感を楽しめるようにやさしくすりつぶし、粒感を残す。
2. フライパンにくるみを入れて弱火で炒る。くるみのいい香りがふんわりと漂ってきたら火を止める。
POINT
拓さん:「すりつぶしたくるみは焦げやすいので、つねに木ベラを動かし続けること。焦げ付かせないためにフライパンをあげて火から離すのもいいと思います。」
3.くるみ(50g)と味噌(50g)、はちみつ(30g)を混ぜ合わせて完成。
POINT
拓さん:「使う味噌によって塩味が異なるので、塩気と甘みはお好みに応じて調整してくださいね。」
甘辛く、食べ始めたらとまらない味わい。
香ばしいくるみの香りが口のなかで広がります。
くるみ味噌のおむすびはピクニックやお弁当にもぴったりです。
拓さん:「他郷阿部家のメインディッシュはおくどさん(かまど)で炊いたおむすびです。おむすびに添える調味料として、その時季を味わえる季節の食材を使った味噌をお出ししたいなと。夏の他郷阿部家でお客様に食べてもらっているのは山椒味噌。夏の終りから秋にかけてはくるみ味噌を楽しんでいただきたいと思っています。」
くるみ味噌は根菜、葉野菜、ウリ科の野菜、お肉まで、なんでもおいしくなる万能調味料です。
拓さん:「とりわけ、蒸し野菜はくるみ味噌の香りと甘辛い味を楽しめるうえに、気軽に一品をつくることができる。葉ものをゆがいて和えるだけでも、ナスを炒めて和えるだけでも、おいしく食べられますよ。」
ご自宅の近くに山や森がある方は、鬼ぐるみが生えているかもしれません。ぜひ収穫にも挑戦してみてください。
1.9月から10月にかけて里山に入り、木に実ったくるみを採る。もしくは自然に落ちた実を拾う。
※収穫には高枝鋏とクルミをいれる袋を持っていきます。
POINT:くるみの木を見つけるポイントは、枝先に実っている丸いくるみを見つけるか、道端に落ちている実を見つけること。
2.くるみを採ったら、表面に土がかぶさる程度穴を彫り、袋に包んだままくるみを土に埋める。腐らせることで殻から実が取りやすくなる。
POINT:埋めた場所を忘れないように、目印として袋を一部分だけ地表に出しておきましょう。
3.埋めてから約1ヶ月後、腐ったくるみを土から取りだし、洗って乾かす。
POINT
拓さん:「上手に割るポイントは、刃をくるみのつなぎ目にあわせて割ることですね。手で包むように割ると、割った際にくるみの殻が飛び散らないですよ。」
──くるみ割り器を持っていない場合はどうすればいいですか?
拓さん:「ドライバーで殻を開けるか、割ってあるくるみを買っていただければいいと思いますよ。」
5.金物でくるみの実をえぐりとる。
POINT:手数が多くなるとくるみが細かく崩れてしまうため、手数は少なくするためにやさしくえぐり取ります。
拓さん:「くるみ専用の道具も使いましたが、自分にはたこやきのクシが合っていたんです。紹介するやり方を参考にしつつ、自分のやり方を見つけてみてくださいね。」
拓さん:「都会で暮らしていた頃はあまりしなかったけど、大森町にいると、山に入りたくなるんです。くるみは里山であれば手に入りやすい食材。里山で食材を採ってくる姿を見ている僕の子どもたちも、里山でたけのこを掘ったり、道端に生えているつくしを採って、それを佃煮にしてくれたりする。
僕自身が里山で採った食材で料理してる姿を見ていなかったら、子どもたちにその楽しさは伝わっていないと思います。
無理してやっているわけではなく、ごく自然に、自分が楽しいからやっている。その姿を見て、子どもたちも真似しているんでしょうね。」
* * *
自ら里山で鬼ぐるみを採ってくること。
季節の山の幸で食卓を彩ること。
それは他郷阿部家の料理人・小野寺拓郎さんが石見銀山遺跡のある大森町に移住して間もない頃に、地元の先輩方に教えてもらい、みずからの暮らしに取り入れながら、毎年の季節の楽しみとして生活のなかにある営みなのだそうです。
このように大森町での暮らしを楽しみながら、他郷阿部家の食卓は創られています。
これから先も、暮らしを豊かにするヒントをお届けしていきたいと思います。
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(取材 / 小松崎拓郎)