醤油の麹づくり

4月のある日、鄙舎(群言堂本社の茅葺の家)へ行くととても香ばしい、美味しそうな香りがした。

これは怪しいぞ。

そう思いながら中に入ると、台所でスズキくん、拓さん(阿部家料理人)、群言堂新人の鷲見さん、元糀屋さんで銀山ガイドの橋田さんがせっせと何かをしていた。橋田さんは麹や発酵のことだけでなく石見銀山の歴史など、いろんなことを教えてくれる我らの師匠である。

香りの正体はこれだった。煎った小麦を粉砕したもの。

何のためのものか聞くと、醤油麹をつくっているのだという。この小麦に種麹を混ぜて、茹でた大豆と混ぜて仕込むそうな。

楽しそうなので三浦も混ぜてもらった。

この醤油麹で醤油を仕込み、今スズキくんたちが手掛けている「群言堂食の定期便」に入れる加工品の調味料にするのだという(ただしうまく仕込めたとして使えるのは1年後という長〜い話だ)。

群言堂|食の定期便

仕込みの続き。

これが種麹。

小麦に

種麹を

混ぜまして……

煮て冷ましつつ水気を飛ばした大豆を

先ほどの小麦&種麹に入れまして

混ぜまして

こう。一日麹室(鄙舎の掘りごたつ)で保温しながら発酵。

最初は大きな発泡スチロールの箱にまとめて。

途中、深夜に切り返しという工程(満遍なく混ぜる)を経て、丸一日経ったら、もろぶた(平たい木の箱)に分けて発酵の第二段階へ。

この状態で温度をキープし、二日間面倒を見る。豆麹の発酵は難しく、納豆菌が回って失敗しやすいとのこと。しかも美味しい納豆になるならいいがそうでもないのだという。

しかし翌日もろぶたへの入れ替えをした時にはすでにほんのりと納豆臭が……。

心配になって橋田さんに電話して教えを請うと、とにかく温度が上がりすぎないように気をつけて管理をするようにと言われる。

そこからおよそ4時間ほど経った段階で見てみると、温度は低温で保たれており、ほんの一部だが黄色い麹の菌糸が回っているのが確認できた。

ほぼ、伝わらないがほんの一部だけ菌糸が生えてるんだ本当なんだ。引き続きスズキくん、拓さんと3時間おきに様子を見て温度管理をしていく。

うまくいくといいなあ。美味しくない納豆を大量生産してしまったら最悪だ。

と思っていたらみるみるうちに温度が超えてはいけない40度を超えてしまい、頑張って冷ましながら管理する。納豆臭が漂い始める。やばいぞ。

冷ましている様子。ちなみにこの発酵室は本社の茅葺の家・鄙舎の掘り炬燵。最近、発酵室としてちょうどいいことが分かり活用している。

ということで冷ましたり温めたりしながら(実は途中50度を超えたりもしながら)なんとか3日間が過ぎたが、さあ果たしてちゃんと麹になっているのだろうか?

わからない。

わからないので橋田さんに見てもらったが、できているとお墨付きをもらえたので、無事麹が完成したようだった。

正直自信ないが、とにかくできたので早速醤油を仕込むことにした。

醤油仕込みのレシピ
〜材料〜
・麹 11kg
・水 12kg
・塩 5kg
今回は塩分濃度17.8%に設定(理由は特になく、軽量の都合の良い分量にした)。仕込みは麹づくりと比べたらびっくりするくらい簡単。塩を水に溶かし塩水を作り、麹と混ぜるだけである。

こんな風になる。あとは時々混ぜる。橋田さんは最初の2週間は2、3日に1回くらいのペースで、1ヶ月までは週1回、あとは2週間に1回くらいの目安と言っていたような気がする(メモを取らなかったのでうる覚え)。

特に最初は雑菌が入りやすいので清潔な手や道具で混ぜることに注意し、混ぜすぎずに表層部分を中に押し込むくらいでいいと言っていたような気がする。

ここまでの仕込みは鄙舎で行ったが、ここからはスズキファームズの農産物加工場へと場所を移し保存していく。

「SUZUKI FARMS農産物加工場」は大森町の端っこの世界遺産センターの脇に存在する。この春から借りることになり、できることの幅が広がってスズキくんもウキウキしている。

さあこれからうまいこと醤油になるのか、ドキドキの結果は1年後までお預け。楽しみに待とうと思う。

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