第四話 モノ造りで人と木を繋ぐ|オークヴィレッジの根のある仕事

こんにちは。

第4話の今回は、小物から家具まで 、木を活かし、様々なモノを生み出し続ける商品開発部・佐々木の話をお届けします。

「素材・技術・デザイン」の三位一体を大切にしたモノ造り、その背景にあるものとは。


こんにちは、オークヴィレッジで商品開発を担当する佐々木と申します。

主に商品の企画やデザインなどを手掛けていますが 、私がいつも考えるのは、木のモノによって人と木が繋がるきっかけをどう創り出すかということです。

“森と人を繋ぐ椅子“というコンセプトでデザインした「Mori:toチェア」

私はこの仕事を通して今まで数多くの人たちと出会いましたが、不思議なことにいまだかつて木が嫌いな人に巡り合ったことがありません。

「私たちが木を好きな理由は何か?」

その問いが私のモノ造りの起点ですが、今ではその答えの緒は先達がつくり上げてきた人と木の長い歴史にあるのではないかと思うようになりました。

日本は温帯に位置するため四季があります。

国土は亜寒帯から亜熱帯に達するほど南北に長く、かつ火山活動により隆起した急峻な山地山脈がそれぞれの陸地にちょうど背骨のように走り、その東西と南北を分断しています。

これらの条件が掛け合わさることで気候帯が複雑化し、優に数百種類にも及ぶ樹木が生育する世界でも類を見ない豊かな温帯の針広混交林が形成され、国土の約7割がその森林で覆われています。

私たちの身の周りには常に森林が、木がありました。

1万年以上前の縄文時代からその実を食べ、燃料にし、住居や生活道具も作り、生きるために木を利用してきました。

6世紀に大陸から仏教が伝来し国内に広まり多くの寺院が建築され木工技術は急速に進歩します。

607年に創建された法隆寺は世界最古の木造建築物であり1400年を経た今でもその美しい立ち姿は人々を魅了します。乾燥と湿潤を繰り返すこの国でこれだけ長い時間、木でできたものがその姿を維持するのは並大抵のことではありません。

素材に使う木の性質に対する理解無駄のない構造。それを支える継手や仕口など高度な木工技術の全てが揃うことで初めて実現するのです。

さらには万物には神が宿るという八百万の神の思想のもと、まばゆい新緑に躍動感、落葉した木々の姿には寂寥感など、身近な樹木の姿にその時々の自らの心情を重ね合わせ、木や森林に対する想いを醸成してきました。

日本人は物理的にのみならず精神的にも木を拠り所とする文化を長い年月かけて築き上げながら共生を続けてきたのです。

この木の文化の延長線上に今いる私たちは、これらのことから多くを学びながら、現代の暮らしに適応したデザイン、森林事情に合致した木材の使用などの社会的要件を十分に踏まえたモノ造りを行わなければいけないと考えています。

木の魅力を最大化するデザイン、最良の使い心地、合理的な構造を高い次元でバランスをとることができれば、それはモノとして人の心に働きかけ、より豊かな暮らしのイメージを喚起し、生活に取り入れてみようと考えるきっかけになります。

何より木でできたものに触れて、毎日使っていただくことから、人と木との繋がりは始まるのです。

流線型が特徴のペンケース「TANTO:」

私は多くの素材の中から木を選び、その可能性を探求し続け、気がつけば四半世紀になりました。

木という、人に近い有機素材だからこそ実現が可能なモノ造りで、これからも人と木の出会いを創出していきたいと思います。


【プロフィール】
オークヴィレッジは、木のおもちゃや家具、木造建築を手がける木工房です。1974年の創業以来、日本の森から木という恵みをもらい、飛騨高山の地で日本の伝統技術を駆使したモノ造りを行いながら、森林保全活動や林業の6次産業化にも取り組んでいます。

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