着る人の生活に寄り添う、唯一無二のものを作りたい
着心地の良さと美しさの追求に、終わりはありません。
「肌ざわりがとてもいいけれど、肌離れをもっと良くしたい」
これは、二重ガーゼを追求するなかでの群言堂が目指す着心地です。
「肌離れ」・・・あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、着心地を左右するとても大切な要素なのです。
25年前に誕生した当初の二重ガーゼも、すでにふんわりとやわらかい肌ざわりの良さは抜群でした。
しかし、やわらかさを追求したことによって、ときには肌にまとわりついてくるような感覚もあったのだとか。
そこで「やわらかい肌ざわりはキープしつつも、もう少しさらりとした着心地にならないか」ということで、福田さんに「肌離れ」を良くするための相談をしたのです。
福田社長:「群言堂さんから “風合いもいいしやわらかくて気持ちいいんだけど、やっぱり肌離れが悪いとお客さんが違和感を覚えるかもしれないよね” と言われて。だから25年前の二重織りに、何かひとつ足りなかったっていうのは肌離れにあったわけです。そこから、どうすれば改善できるのかすごく考えましたね」
試行錯誤の結果、生地の接結点(二枚の織物を重ね合わせて一枚の生地にするときに、つなぎ合わせる点)を並べ替えることで解決できました。
福田社長:「接結点を変えることで、生地の風合いも変わってくるんです。接結点が少ないと織物同士が離れたり、反対に細かくすると二重織りだけど一枚に見えたり。そのなかでベストな風合いを出すために、群言堂さんから『こうしてほしい、ああしてほしい』とイメージをいただいたうえで、何度も試作を重ねて作り上げていきました」
こうして、群言堂の「二重ガーゼ」の抜群に心地よい肌ざわりが実現しました。
ほかにも「逆スラブの凹凸をさらにふっくらさせたい」など、一見些細なことでも、着心地に関わる要素は、妥協せずに改善を続けています。登美の定番素材たちは、常に少しずつアップデートを重ねているのです。ここでも、福田さんの挑戦心と技術力が欠かせません。
福田社長:「結果的に私自身の技術もアップデートしていきますし、群言堂さんの品質アップにもつながってよかったなと、生地を改良するたびに感じますね。私たちは常に『誰も真似できないものを作りたい』そして、『何年も着るうちに、その人の生活が洋服に表れて、さらに良さを感じてもらえるようなものを作りたい』と思っているので。群言堂さんとのものづくりでは、それを一緒にできるんです」
わたしたち群言堂と福田さんを結びつける、大切な精神──それは、「質の高さはもちろんのこと、着る人の生活に寄りそう唯一無二のものを作りたい」という想いなのです。
若い世代の感性を取り入れて、アップデートを続ける
福田社長は「常に新しい生地を作り続けるためには、若い人たちの感覚をどんどん取り入れて、今ある生地をアップデートさせていくことが必要」と話します。
「我々は、すごい資金があるわけでも、大企業みたいにたくさんの専門家や科学者を雇えるわけでもありません。なかなか0から新素材を生み出すことは難しい。だからこそできるのは、今まで積み重ねてきたものを進化させることです」
実際に、福田さんには若い職人さんがどんどん増えているのだとか。
福田社長:「若い感覚は、とても大切。私が若い世代に技術を伝えるときは、ある程度の骨組みまでは教えるけれど、決して完成までは教えないんです。ときには『全部教えたほうが早いじゃない』と言われることもありますが、織物に答えはありません。せっかくの若いアイディアを壊すことのないよう、我々のものづくりの基盤はしっかりと伝えつつも、自由な発想で成長してほしいと思っています。」
ものづくりの根っこの部分はきちんと継承しつつ、柔軟に新しい感性を取り入れ、貪欲に進化し続けようとする姿勢が、とっても福田さんらしいです。
群言堂も若いスタッフが少しずつ増えているところ。“登美”も若い感性を取り入れながら、進化を続けていけたらと考えています。
福田さん、これからも一緒にふんわりした着心地の良さを追求して、唯一無二のものづくりをしたいですね。