遠州産地の機屋で生まれた、ふんわり優しい肌ざわり【遠州の福田織物さん×群言堂】第1回

福田社長

みなさんは “登美” の定番素材「二重ガーゼ」に触れたことはありますか?

ふんわりと気持ちよく、とっても優しい肌ざわり。肌に触れる内側はふわっとした糸を甘く織り、外側は極細の糸を密に織っています。こうすることで、やわらかく抜群に心地いい風合いと、繰り返しお洗濯しても毛羽立つ心配が少ない丈夫さを両立させました。

二重ガーゼのホームウエアは「暮らす宿 他郷阿部家」のご宿泊でご利用いただいていて、〝あのパジャマはどこで買えますか?〟と後にお問い合わせをいただくこともしばしば。それくらい、やみつきになってしまうほどの優しい肌ざわりなのです。

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くつろ着 前あきシャツ / くつろ着ずぼん (S・M・Lサイズあり)

この素材は、群言堂が25年間にわたり試行錯誤してできたこだわりの素材。
そしてこの「二重ガーゼ」の誕生に欠かせない存在が、「福田織物」(以降、福田さん)でした。

“理想の着心地” を実現するのに欠かせないパートナー


暖かい気候と豊かな水が綿花の栽培に適し、日本有数の綿織物産地として江戸時代から栄えてきた遠州地方。その遠州産地・静岡県西部で綿織物の製造開発を行なっているのが、福田さんです。
福田さんが作る生地の魅力は、なんといってもやわらかくて優しい肌ざわり。それでいて透けすぎたり、爪などによる引っかけが起こることもなく、安心して着ていただけるお洋服に仕上がるのです。着るごとにやわらかな風合いになっていくのも、うれしいポイントのひとつです。何年も、着心地の良さを楽しんでいただけますよ。

「二重ガーゼ」のほかにも、立体感ある表情が魅力の「逆スラブ」、織り方でプリーツの凹凸を表現した「ストレッチプリーツ」など、登美の定番素材の数々は、福田さんの力なくしては生まれませんでした。

逆スラブ格子シャンブレー(2019)

ストレッチプリーツ(2019)

特に「逆スラブ格子シャンブレー」は、逆スラブ糸を緯(ヨコ)だけでなく、経(タテ)にも使用しています。
『太さにムラがある糸を経(タテ)に張る』これは織物の技術的にも大変な技術と手間暇が必要になります。
糸に細いところは織っている最中に切れてしまう危険性があり、糸の太いところも撚りがほとんどない綿(わた)のような状態のため大変切れやすい糸なのです。福田さんが丁寧にじっくりと、時間をかけて織ってくださっているのです。

ともに試行錯誤を重ね、手間暇を惜しまず良いものづくりを追求してくださる福田さん。いわば群言堂にとっての “理想の着心地” を実現するのに欠かせないパートナーです。

── いったいどうして、こんなにも気持ちの良い生地が作れるのでしょう?

その背景には、テキスタイルメーカーとしての誇りと、常識にとらわれずに新しいものを生み出し続ける飽くなき挑戦心がありました。

良いものづくりのためには、変化を恐れない。


福田さんが得意とするのが、極細の糸を使用した織物──いわゆる “細番手” で織る生地です。糸が細ければそのぶん途中で切れてしまう危険性も高まります。細番手の織物は、非常に難易度が高いのです。

さらにそれを服として身につけられるよう、しっかりと丈夫な生地に仕上げるのは至難の業。じっくりとていねいに織り上げる繊細さが、抜群に気持ちの良い肌ざわりの秘訣になっています。

群言堂の企画スタッフも「細番手を織らせたら、福田さんの右に出るものはいないくらい」と心底惚れ込むほど。

福田織物さんの「光透けるストール」

開発から3年以上かけて完成したという、極細糸を使用した極限に薄く軽いストール

二代目社長の福田靖さんは、次々と新しい道を切り拓いていく人です。良いものづくりのためには変化を恐れません。その姿勢はご本人も尊敬するという、坂本龍馬のようです。
企画・製造・販売まで一貫して生地作りを手がけるテキスタイルメーカーの先駆けになったり、新しい織機を惜しみなく導入したり、ときには産地の垣根を超えて、県外の技術を取り入れたり・・・・。

細番手の糸を用いた生地も、新しいものを作り続ける挑戦のなかで生まれました。

福田社長:「やっぱり、“攻める”ことは必要だと思っています。中途半端なものではお客様に感動してもらえませんから。たくさんの方に長く使っていただけるように、生地や素材となる糸の性質を、数値に基づいてきちんと理解することも欠かしません。風合いが良いだけでも、丈夫なだけでも、生産性が高いだけでもだめ。肌ざわりがよく、なおかつ年月を重ねるほどに着る人の生活が表れてさらに着心地がよくなるような生地作りを大切にしています。」

その姿からは、確かな技術への自信と誇り、そしてものづくりへの愛がにじみ出ていました。

『有限会社 福田織物』オフィシャル・ホームページ


書いた人

タクロコマ(小松崎拓郎)
1991年生まれ、茨城県龍ヶ崎市出身の編集者/カメラマン。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集部所属。

撮影した人

伊場 剛太郎

1981年生まれ、静岡県浜松市出身のフォトグラファー。10BANスタジオ勤務後、藤井保氏に師事。2017年に独立。

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