イヌやニワトリ、ヒツジにヤギ、動物たちもみんな大好き立花テキスタイル研究所 新里カオリさん。都会から島へ移り住み、ゴミを資源に変えていく「ものづくり」の背景にどんな考え方があるのだろう。
第2回は、立花テキスタイル研究所のものづくりに焦点を当てたいと思います。
イヌやニワトリ、ヒツジにヤギ、動物たちもみんな大好き立花テキスタイル研究所 新里カオリさん。都会から島へ移り住み、ゴミを資源に変えていく「ものづくり」の背景にどんな考え方があるのだろう。
第2回は、立花テキスタイル研究所のものづくりに焦点を当てたいと思います。
立花テキスタイル研究所ができるまで
大学を卒業し、藤野町(現:神奈川県相模原市)で暮らしながら関東での仕事をしつつ、週末は尾道に通っていたという新里さん。
尾道に移住して、この研究所を立ち上げるに至った理由はなんだったのだろう。
新里さんちの台所、カウンターも廃材を使って直している
「私の場合、すぐに地方に移住ということが出来なくて、10年くらい東京と尾道を往復する生活を続けていました。
そうして都会と地方を行き来する生活を送っていたら、だんだんと自然豊かな田舎と無機質の都心部のコントラストが年々際立ってきて、自分がどっちに身を置いたら幸せなのかというのを考え続けてましたね。
東京で働いていた私としては、田舎で仕事をしてちゃんと食べていけるのかという不安もありました。
でも、そうして尾道に関わるうちに、大学の時に学んでいた草木染めや天然繊維を使ったもっとローカルなものづくりをしていきたいと思うようになってきたんです。」
都会と田舎、生きていくために必要なものがどちらにもあった。
自分の生き方にとって本当に必要だと思うこと以外の部分を出来るだけ削ぎ落として考えてみたという。
そうして考えていく中で、都会での暮らしの中では「お金」に対してもどういう気持ちで向かっていいか分からなくなってしまった。
「この地域で暮らしていきたいと考えた時に、自分が欲しいものを買うために自分で働いてというところではなくて、外から入ってきたお金を、地域の人で分け合うようなカタチになったら、私たちがこの向島にいる意味が深くなっていくなと思って、
例えば鞄を買っていただくことで鉄工所とか農家さんとか、縫製して下さったいる縫い子さんにお金が回る仕組みを会社として作りたかったんです。
そして、どうやったら自分が懲りずにものづくりを続けられるかと思った時に、ゴミになるのを最低限防ぎたいと思ったんです。」
ただ「ゴミを少なく」という考え方をもうひと越えして「ゴミ」と呼ばれるものを有効利用することに、新里さんがものづくりを続ける理由や会社が存続する理由を見出せたという。
ずっとガラケーだった新里さん、最近やっとスマホに替えたようで、プチプチをスマホケースと呼んでいた。
ゴミを資源に変えていく
新里さんが見つけたのは足元にあった宝物。
「地域のいらないものを資源に変えられないだろうか」という思いから
立花テキスタイル研究所のバッグや布小物は、「不用とされるもの」を草木染めという染色技法を使って染められていく。
地元の農家さんや家具屋さんから出る木っ端。鉄鋼所から廃棄される鉄粉。
それらは一度は「ゴミ」と呼ばれ廃棄されていたもの。
「例えばこの鉄粉。
造船の仕事って全部分業なんですけど、私たちが関わっている所は、最初に鉄の板を仕入れきて表面の酸化膜を剥がすという会社なんです。
ベルトコンベアーで運ばれてきた鉄の板に鋼のショットブラストをがーっとかけていくんですけど、表面から剥がれたパウダー上の鉄粉が大量にでてくるんです」
その工場では月に2トン以上の鉄粉が出るのだそう。
しかしその鉄粉は、純度の高い鉄ではなく色んな金属が混ざった物。
もう一回溶かして鉄と他の金属に分ける手間をかけるほどの物でもないので再利用はせず、すべて産業廃棄物になってしまう。
まさにゴミとして廃棄されていくもの、それらを立花テキスタイル研究所はものづくりに活かしていく。
世の中の大きな産業の流れの中で、ほんの一部の廃棄物を活かしていく取り組みかもしれないけど、新里さんたちの取り組みはとても真っ直ぐで、向島や周りの地域の方々に心地よい循環を生み出していると感じた。
地域で生まれた素材
立花テキスタイル研究所は、耕作放棄地を使って綿や藍の栽培にも取り組んでいる。
「綿の栽培は来年で10年目の取り組みになるんですが、最初はプランターで細々始めていました。
それから徐々に畑の面積を増やしたり色々やったんですけど。
今は、その綿の栽培自体は弓削島のNPO法人の方にお願いしています」
「そこの方たちは、朝5時から草抜きしてくださったり。丁寧に管理してくださるので収穫量がすごくて、去年だけで180kgくらいあったんです」
-あのふわふわの綿が180kg。
「そうですね、綿の180kgってすごい量で、それを紡績会社に持って行って、種取りをしてもらって、綿のみの状態にしてもらったものを、綿の茎で染めています」
立花テキスタイル研究所が育てている綿は、和綿といって日本で昔から育てられていた。
太くて弾力があるが、繊維1本1本の長さが短いらしい。
短い繊維を紡績していくことは難しくそのままでは糸に出来なかったので、オーガニックコットンを混ぜて糸にしてもらっているという。
帆布の原料となる綿そのものを育てることで、地域に仕事が生まれたり、綿花をとった後に出た茎も再利用しているのだ。
暮らしに馴染むモノ
立花テキスタイル研究所が生み出す商品は、使い勝手や経年変化を楽しめる工夫がされている。
「世の中には、素晴らしい草木染めをされる人間国宝と呼ばれるような方もいらっしゃいますし、草木染めの作家さんも沢山いらっしゃるんですけど、目の前に出来上がったものが完成ではちょっと作り手のエゴが強いなと感じているんです。」
「モノには使い込んでいく良さっていうのがあると思うんですが、それは今までの草木染めには当てはまらなかったんですね。
完成されたものが最高の状態で、使っていくと価値が減っていってしまうようなものだったんです。
私たちは生まれたてほやほやの物をお客さまに提供して、お客様が使い込んでいくことで もっと美しいモノに変えていくということに、作り出す価値があるかなと思っているんです」
草木が芽生えて、花が咲き、実をつけて枯れていくように。
時間と共に変化していく自然を楽しむように。
立花テキスタイル研究所が作る物は、使い込んでいくことでその人の暮らしに馴染んでいくのだ。
今回、僕たちが販売させて頂いている柿渋で染められた商品も、その人の暮らしに馴染むように美しく変化してくのだろう。
立花テキスタイル研究所のものづくり第3回 御調町の山頂から柿文化を広める尾道柿園へ
新里さんと一緒に、尾道市・御調町の山頂で柿渋だけでなく柿酢やドライフルーツ、昔ながらの作り方で干し柿を作っている尾道柿園に行ってきました。干し柿が並ぶ姿は圧巻です。
- カテゴリから探す -
衣着て楽、見て楽の服
食丁寧に、味わい深く。
住暮らしを紡いでゆく
- シリーズで探す -
- 素材で探す -
© 石見銀山 群言堂 All Rights Reserved.