植物担当スズキの里山採集記|02 春の香り!クロモジの花を摘む

――「植物担当スズキの里山採集記」

南会津の自然の中で生まれ育った野性児・スズキ青年。

染織の世界を志して大都会の荒波にもまれ、流浪の果てに島根の地に流れ着いた。

これは、島根で再び自然に還ったスズキが里山を駆け巡りながら自分の道を突き進む、あくなき探求の物語である――

末尾のスズキ直筆絵日記もお楽しみください。

あるお山にやってきた

3月末のある晴れた日、Gungendo Laboratory植物担当・スズキは大森町内のとある山の頂上にいた。

一緒にいるのは町内のパン屋さん「ベッカライ・コンディトライ・ヒダカ」の日高さん夫妻と0歳の次男さん。

パンの材料を一緒に集めに行かないかと言葉巧みに誘って、日高さんを自らの仕事に巻き込んだようである。

巻き込まれたといっても、当の日高さんも結構乗り気である。

普段から山菜や民家の庭先で余っている果実など、大森で採れるものを積極的に材料としてパンやお菓子に取り入れている。

最近クロワッサンなどに入れていたふきのとうはもう時期が終わり、花が開いていた

今回のターゲットは「クロモジの花」。

クロモジは和菓子の楊枝などに使われる香りのいい木である。日本では本州以南にかなり広範囲に生えており、大森周辺の山にも数多く見ることができる。

山陰ではお茶としても良く飲まれていて、「クロモジ茶」あるいは「ふくぎ茶」などと呼ばれ嗜まれている。

山にこの萌木色を見つけると嬉しくなる

花はとても小さく可憐

枝を煮出したお茶は淡いピンク色が美しく、すっきりしていて夏に冷やして飲むのもオススメである。

若葉や花もお茶になるが、特に花は香りが強くハーブティのように楽しめる。

春になると新芽と一緒にやわらかな萌木色の小さな花が咲くが、

生のままお湯を注ぐと全く同じきれいな色が出て、レモングラスに近い鮮烈な香りが鼻をくすぐる。

春が来た!と叫びたくなる。

日高選手、楽しそうである

ひたすら摘む

今回は枝は採らずに花と新芽をひたすらに摘む計画。

天気も良くみな張り切っている。クロモジ自体は珍しい植物ではないためすぐに見つかる。

見つかったら。摘む。

見つける。そして摘む。摘む。

時々LINEで「ツムツム」というゲームの誘いがくるのだがこのことだろうか?そうだとすればさぞ楽しいゲームであろう。

広がる前の花芽は空に向かって立っている

スズキ選手は摘み放題の状況にアドレナリンが出ている模様

はじめはワイワイと笑いながらやっていたが、みな段々と無言になっていく。

ただひたすら摘み続けて約2時間、用意した大きめのボウルはいっぱいになった。

大量である

朝10時ごろに始めたのが気付いたら12時を過ぎていた。

そろそろいいだろうと手を休めると、春の日差しと温かな風が心地よい。

クロモジに触れつづけた手や指からはとてもいい香りがする。今年も春がきたのだと嬉しくなる。

さあ、この花たちがどんなパンやお菓子に変身するか楽しみである。またできた暁にはこちらでご紹介したい。

それでは恒例のスズキの一言絵日記を、と言いたいところだが仕事のトラブルにより遅れているそうなので近日中に公開予定となるそうである。あしからず。

スズキの一言絵日記(4月23日更新!)





主人公

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「スズキ」こと鈴木良拓(すずき・よしひろ)
Gungendo Laboratoryブランド植物担当。福島県南会津町出身。

学生の頃に手伝いに行っていた八王子の機屋で群言堂の存在を知る。小さいころから慣れ親しんだ植物への興味が冷めず、庭にある豆柿で柿渋を作ったり、野草から繊維を採ったりしているうちに就職活動に失敗。大吉さん登美さんに拾われ2012年入社。


書き手

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三浦類(みうら・るい)
群言堂広報担当。愛知県名古屋市出身。

学生時代に群言堂のインターンで大森を訪れたことをきっかけに2011年入社。広報誌「三浦編集長」の制作や取材対応、WEB・印刷物での情報発信などを担当。植物担当・鈴木や阿部家・小野寺とともに狩猟免許を取得するなどして、頻繁に山や海で遊びながら大森暮らしを楽しんでいる。趣味はフラメンコギター。

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