植物担当スズキの里山採集記|01 春の山菜採り

――「植物担当スズキの里山採集記」

南会津の自然の中で生まれ育った野性児・スズキ青年。

染織の世界を志して大都会の荒波にもまれ、流浪の果てに島根の地に流れ着いた。

これは、島根で再び自然に還ったスズキが里山を駆け巡りながら自分の道を突き進む、あくなき探求の物語である――

スズキ主役のコンテンツがついに誕生!最後にはスズキ直筆の絵日記もあるよ!

「さむっ」

1月のある日、スズキはバケツ片手に長靴姿で沼地に立っていた。

ここは大森から車で約10分、隣町にあるセリが多く生えるポイントだ。

まだ冬とはいえ、そろそろ春の山菜が顔を出しはじめる時期である。

時は大寒だが、春の山菜祭りといこうじゃないか。

柄の元になるデッサンを描くスズキ

おっと、忘れていた。

これを読んでいるあなたはスズキって誰だい?と思っていることと思う。本題に入る前に簡単にご紹介しよう。

スズキ(福島県南会津町出身・29歳)は群言堂の中でも際立って個性的なスタッフの一人であり、この文章を書いている広報・三浦の2つ年下の遊び(仕事)仲間である。

Gungendo Laboratoryブランドに所属している彼の肩書きは「植物担当」。あらゆる生物が好きで、大森周辺の里山で拾ってきた植物を使って染色をする「里山パレット」シリーズを牽引したり、里山の動植物を柄に描いたりしているので皆から愛を込めてそう呼ばれている。

会津の自然溢れる環境で育った鈴木は現在も専ら里山を駆け回って洋服づくりの素材を集めるのが日課であり、社内では三浦と同様に仕事をしているのか遊んでいるのか分からない、どちらかというと遊んでいるのかな?と思われながら勤務している。

プライベートでは3年前に結婚し、一昨年かわいい娘が生まれ絶賛溺愛中。お酒の付き合いが一気に悪くなった(当社比)。

まだまだ書けるが、彼のことはまた追々少しずつ、ご紹介していこうと思う。

この日のスズキの装備。社用車の軽バンACTY、古道具屋で800円で買ったブリキのバケツ、田んぼ用の長靴「みのる君」、古道具屋で800円で買った竹の背負子

さて、スズキの概要が知れたところで本題に戻ろう。

スズキも三浦も、いつも美味しい山菜の採れる春が待ち遠しくて仕方がない。

待ち遠しすぎたのか、スズキはこの春の新作で山菜柄シリーズまでつくってしまった。

そして今回、とうとう待ちきれずに冬のうちに山菜採りを決行することにした。はたしてこの寒い季節にどれだけの種類が採れるのか見ものだ。

まず目指したセリの採れる場所は、隣町にある群言堂スタッフの所有する土地である。

以前も行ったことがあったが、記憶があいまいで道に迷ってしまった。

車を停めて土地の持ち主に電話で道を尋ねるスズキ

一度車を停めてスズキが電話で道を聞いている間に、気になる張り紙を見つけた。

もはや色あせて相当古そうだが、クマらしき絵が描いてあるのが分かる。

どれどれ、近寄って見てみよう。

何か書いてある。

「クマに」

クマに、なんなんだ・・。

気になるし、ちょっと怖い。クマが出るのだろうか?このあたりは家もぽつぽつとしかないエリアだからよけいに不安が募る。

まさか「クマに親切に」とかいう友好の標語でもあるまい。絶対に「クマに注意」とか「クマに用心」とかそういうやつだ。

とにかく気を付けた方が良さそうなのはひしひしと伝わった。

クマに怯えつつも、なんとか目的地に辿り着いた。

「お、あるある!」

早速セリを見つけてテンションの上がるスズキ。

ぬかるんだ沼をものともせず、株を見つけては引っこ抜く。

まだ若いセリは柔らかく美味しそう

ある程度泥を落としておくと後処理が簡単

「こんなもんかな」

食べるのに十分な量が採れたら、さくっと切り上げる。

すぐ脇の用水路で泥を簡単に落として・・・と用水路に降りると今度は三つ葉を発見。

三つ葉もすかさずゲット

帰り道、いつも遊んでくれる大工の鬼村さんから教えてもらった秘密の葉ワサビ群生地に寄り道をする。

いつもは3月ごろに採りに行くのだが、果たして1月にあるだろうか。

あった

あった。楽勝。

葉ワサビは若いものはそのままサラダにもできるが、やはり美味しいのはワサビ漬けである。

根っこは小さめだが、ちゃんと摺ればお刺身などのワサビとして使える。甘みがあり、そこまで辛くない。とても美味しい。

とても瑞々しい葉ワサビは見つけるとかなりテンションが上がる。葉っぱはピリリと辛い

1月なのになかなかいい採れ高である。スズキも嬉しそうだ。

勢いに乗ってもう何種類か採りたいところ。本社周辺を探してみることにした。

会社の目の前の小川には・・・

ユキノシタ!コインくらいのかわいい大きさです。

本社に戻って目の前の小川を見ると・・・

セリも生えているのを確認!(あんなに遠くまで行かなくても良かった)

そして天ぷらにするとおいしいユキノシタがたくさん芽生え始めていた。小さいものは1円玉より小さいが、ちゃんと見た目はユキノシタであることに感動。

5㎝程度まで育った葉っぱを採集した。

美味しそうな色である

片手一杯分採った

そろそろいいにしようや~となったところで、最後にふきのとうまで手に入れた!(※これらは先日三浦が見つけて採らずに置いておいたふきのとうたちである)

しめしめ、今夜は思った以上の宴が期待できそうだ。

本日の収穫。上の段が左から葉ワサビ・セリ・三つ葉、下は左からユキノシタ・ふきのとう

なんと新作の柄に使われた山菜をすべてコンプリート!冬の間でもずいぶん採れるものである。

達成感に溢れるスズキの顔をご覧いただきたい。

とったど~

というわけで新連載の初回は冬の山菜採り大成功!めでたしめでたし。

最後にスズキの一言絵日記をお楽しみください。

スズキの一言絵日記

<おわり>

201802sansai_banner.jpg

Gungendo Laboratory 春の山菜柄シリーズ





主人公

inkan_suzuki.jpg

「スズキ」こと鈴木良拓(すずき・よしひろ)
Gungendo Laboratoryブランド植物担当。福島県南会津町出身。

学生の頃に手伝いに行っていた八王子の機屋で群言堂の存在を知る。小さいころから慣れ親しんだ植物への興味が冷めず、庭にある豆柿で柿渋を作ったり、野草から繊維を採ったりしているうちに就職活動に失敗。大吉さん登美さんに拾われ2012年入社。


書き手

inkan_miura.jpg

三浦類(みうら・るい)
群言堂広報担当。愛知県名古屋市出身。

学生時代に群言堂のインターンで大森を訪れたことをきっかけに2011年入社。広報誌「三浦編集長」の制作や取材対応、WEB・印刷物での情報発信などを担当。植物担当・鈴木や阿部家・小野寺とともに狩猟免許を取得するなどして、頻繁に山や海で遊びながら大森暮らしを楽しんでいる。趣味はフラメンコギター。

【わたしの根のある暮らし】石見銀山大森町の自然農法「SUZUKI FARMS」| 植物担当スズキの他の記事

石見銀山 群言堂