こんにちは、めづる編集部です。 突然ですが、「梅花酵母(うめはなこうぼ)」という名の自然酵母をご存知ですか?
梅花酵母は、島根県・石見銀山に咲く梅の花から発見された新種の酵母菌。見つけたのは、石見銀山生活文化研究所の社員であり農学博士の房薇(ファン・ウェイ)です。
こんにちは、めづる編集部です。 突然ですが、「梅花酵母(うめはなこうぼ)」という名の自然酵母をご存知ですか?
梅花酵母は、島根県・石見銀山に咲く梅の花から発見された新種の酵母菌。見つけたのは、石見銀山生活文化研究所の社員であり農学博士の房薇(ファン・ウェイ)です。
MeDuの開発者でもある房
石見銀山の梅の花
「新種の酵母発見は、宝くじを当てるような気持ちで挑みなさい」といわれることがあるほど、難易度の高い研究。けれど房は、とても運がよいことに短期間で新酵母発見にたどりつくことができました。
この梅花酵母、特性を研究するうち、発酵食品開発の分野において非常に有用であることが判明します。
「お酒やパン、味噌の開発はもちろん、スキンケア化粧品としても素晴らしい効能をもったものができそうだ」。 そう考え研究を続け、やがて石見銀山生活文化研究所が開発・販売を開始したのがスキンケア化粧品「MeDu」です。
MeDu(めづ)
2012年、梅花酵母は島根県産業技術センターと共同で特許を取得。現在、島根県の地域資源として活用されています。
■参考:島根の産官学が連携して研究開発を支援。 新しいものづくり創出をサポートします。|梅花酵母サイト
さて。では「MeDu」のほかに、どんな人が、どんな風に梅花酵母を活用しているのでしょう?
この連載では、「梅花酵母をめぐる旅」と題して、梅花酵母関連のニュースをお届けしてまいりたいと思います。
第一回目の今回は、緑うつくしい島根県・弥栄の地に根を張る「どぶろく工房清成(きよしげ)」の今田貴志江さんをたずねます。梅花酵母を活用して作られた、どぶろく「嬉し楽し」の開発背景がお話の中心です。
「どぶろく工房清成」の杜氏・今田貴志江さん
同じ島根県出身の旦那さんが経営する田舎カフェ&キッチン「陽氣な狩人」を手伝いながら、自身も鍼灸マッサージ師として独立して仕事をされている今田さん。
田舎カフェ&キッチン「陽氣な狩人」
人気商品「特製うどん」にアカモクをトッピング
けれどある日、どぶろく工房清成の杜氏を務める今田さんの父親が、突然病に倒れてしまいます。そして今田さんは、お父さまの代わりとして杜氏の仕事を引き継ぐことに。
とはいえ、それまでどぶろく作りはもちろんのこと、発酵にも酵母にもまったく馴染みがありませんでした。そのため、当初はとても戸惑ったといいます。
「とにかく驚きました。発酵の知識なんてなかったですし、せいぜい漬物を作ったことがあるくらいで(笑)。不安感あったのは事実ですね。
けれど、直面している現実を見ると、私がやるしかない。父親から話を聞きながら、見よう見まねでどぶろく作りに取り組み始めました」
父親から引き継いだどぶろく「里山桜」
左)猟師でもある旦那さんの今田孝志さん 右)今田貴志江さん
慣れない仕事に四苦八苦しながらも、温度や湿度、時間の経過で様子を変えていくどぶろく(原料は米と麹がメイン)を「生き物だ」と感じるように今田さんは変わっていきます。
そして、 試行錯誤の末、なんとか父親の守り続けた「里山桜」の味を再現できるようになりました。
ところが、じつは今田さんはお酒が体質的に苦手(!)。ビールは体が受け付けず、なんとかどぶろくは飲めるくらいだそう。
父親のどぶろくの味も好きではあったものの、もう少しアルコール度数が低く、酸味のある、なんというか「もっと女性らしいどぶろくがあってもいいのではないか……?」という気持ちが、次第に芽生えていったといいます。
「せっかく酒造りに関わることができる人生になったのならば、既存の味を守るだけではなくて、自分自身のお酒が作ってみたいと考えるようになりました。
父を継いで杜氏になってから、必死に仕事をしてきました。これからずっとお酒造りに携わっていく人生ならば、もっと自分自身がわくわくすることに取り組みたい。もっと楽しい気持ちで仕事をするためには、どうしたらいいかな……?と。
なんといってもどぶろくや酵母は生き物ですから。自分自身が楽しむことが、味の向上にも絶対につながると思ったんです。そう思っていた矢先に、新聞記事で偶然梅花酵母発見のニュースを知りました」
ときは、島根県の地域資源として梅花酵母を活用できる……というニュースがちょうどリリースされた頃。
今田さんはこのニュースを見て、「梅花酵母って名前がかわいい。私が作りたい未来のヒントが、梅花酵母に詰まっているかもしれない」となぜかピンときたそう。
その後、島根県産業技術センターで、梅花酵母や新しい酒造りについて勉強することに。そして無事に梅花酵母を入手し、商品開発に着手します。
今田さんは、梅花酵母を使って、女性に喜んでもらえるような、新しいどぶろくを作ることに決めました。
けれど最初はうまくいかないことばかり。「里山桜」で採用している酵母は7℃の室内温度で発酵するのに、梅花酵母は同じ温度でもぴくりとも反応しない。
何度も「梅花酵母、死んでしまったのかな…?」と不安になりました。
その後、何度もの試作品開発を重ね、梅花酵母は通常の酵母を扱うときよりも、室内温度を高くしてあげたら上手く発酵し、おいしいお酒が作れるということに気が付きます。それにあわせて仕込みを調整し、やっと「嬉し楽し」が完成。
開発期間は約1年。今田さんに感想を聞くと、 「梅花酵母って、なんだか女の子みたいだなぁと思いました。ちょっと温度を高くして、通常よりも甘やかしてあげないと、おいしいどぶろくに育ってくれない。でもそのおかげで、爽やかな飲み口で酸味が特徴の女性らしいどぶろくが作れたかなと思っています」
「陽氣な狩人」の手伝いや、昔からの仕事だった鍼灸マッサージ師の仕事も続けながら、杜氏として新しいどぶろく作りという夢を追いかけた1年だったと語ります。「大変だった」と笑う今田さんはけれど満足そうで、とても素敵でした。
取材の最後に石見銀山生活文化研究所との関係性をうかがいました。すると、今田さんはじつは「ブラハウス」の頃から群言堂のファンでいてくださったそう。
「ブラハウスのお店と梅花酵母を発見した企業が一緒だなんて全然知らなかったけれど、これも縁ね」と笑います。
梅花酵母が生まれたことで出会える、ちょっぴりよい未来。あなたの暮らしにも梅花酵母が登場する機会があれば幸いです。 ではまた次回を、お楽しみに。
■どぶろく工房清成、嬉し楽しのお問合せ
田舎カフェ&キッチン 陽氣な狩人
どぶろく工房清成
島根県浜田市弥栄町高内イ333-1
TEL 0855-48-5408
営業時間 11:00~19:30
定休日 木曜日・第3水曜日
※「陽氣な狩人」と「どぶろく工房清成」は併設されており、
「陽氣な狩人」でも「嬉し楽し」をお召し上がりいただけます。
販売につきましては、「陽氣な狩人」または「どぶろく工房清成」に
お問合わせください。
※島根県浜田市内では、以下4店舗で販売しております。
・道の駅 ゆうひパーク浜田
・道の駅 ゆうひパーク三隅
・ゆめタウン浜田
・サンプラム(三隅町)
伊佐 知美
1986年、新潟県出身。「登美」ブランドで起用されている「マンガン絣」の産地・見附市が実家。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集長・フォトグラファーとして、日本全国、世界中を旅しながら取材・執筆活動をしている。著書に『移住女子』(新潮社)。
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