「ただいま」からはじまる、本当の私の時間 【よい1日のはじめかた #1】

肌をきれいにしたいと思っても、付け焼き刃のお手入れではなぜか美しくなりきれないーー。

透き通るような美しさを持つ人を眺めていて感じるのは、「もしかしたら、心の余裕や何気ない毎日の習慣がその美しさを作り出しているのかも?」ということでした。

『めづる』編集部は、心地よく暮らしている人の時間の使い方に焦点を当て、「暮らしのリズム」を聞く連載をはじめることにしました。

初回は、石見銀山生活文化研究所に勤める長見早苗が登場。「MeDu」のコンセプトの大切な軸でもある、夜の時間の過ごし方について教えてもらいます。

長見早苗の夜の時間の過ごし方

19:00 終業、帰宅
19:30 手搾りのゆずエキスで作ったお酒で乾杯、夕食
20:30 休憩、愛猫とあそぶ
21:00 入浴、二重ガーゼのパジャマワンピースに着替え
22:00 読書、ヨガ
23:00 就寝
06:00 起床
07:00 朝食、二槽式洗濯機で洗い物
08:00 出勤

よい一日は、夜からはじまる。

仕事が終わるのは、大体19時頃。自宅と勤務先が徒歩圏内と近いため、帰宅時間は非常に短く5分ほど。「ただいま」と扉を開けた瞬間、長見さんの夜の時間がはじまります。

「帰宅後まずするのは、お酒作り。お気に入りのグラスに手搾りのゆずエキス、焼酎、氷を入れて、ゆずの焼酎割りを作ります。

ゆずは、親戚の自家栽培。毎年冬になるとダンボールいっぱいに送られてくるので、料理やゆず風呂でたっぷりと楽しみ、残りは手搾りでエキスに。瓶詰めして冷蔵庫に保管し、年間通して楽しめるように工夫しています(長見)」

ビタミンたっぷりで酸味のあるゆずの味や香りを堪能したら、今度は食事。がんばった自分をいたわるように、ゆっくりと夕食を楽しみます。

食後の休憩時間は、愛猫たちと過ごす至福のひととき

どんなに忙しい日でも、猫の毛並みをなでていると心が落ち着いていくという長見さん。食後はいつも、4匹の猫と一緒にリビングで過ごします。

「こんなに大家族になるとは、当初は想像していなかったんですけれどね(笑)。 もともと犬や猫がだいすき。でも、可愛がっていた飼い猫が亡くなってしまって、さみしい気持ちでいたところに庭に迷い猫が一匹。

目がすこし不自由なようで、かわいそうだなと世話を焼いているうちに居着いてしまったのが、現在一番古株の『ラビ』です(長見)」

飼い猫になった「ラビ」がしばらくして連れてきたのが、ガールフレンドのメス猫。あまりにも2匹の仲がよく、「一緒に暮らしたい」と訴えているかのような様子に、「じゃあうちの飼い猫になろうか」と「チビ」と名前をつけます。

「そうしているうち、『チャー』『サク』も続いて庭に迷い込んできて……。結局、現在の4匹に増えちゃいました(笑)。

『困ったらあの家に行くといいよ』なんて、猫の何かネットワークというか、掲示板みたいなものがあるのかしらなんて思ったり(長見)」

心地よい夜の時間の秘密は、入浴後に着替える三重ガーゼのワンピース

愛猫たちとたっぷりと癒やしの時間を過ごしたあとは、入浴時間。パジャマとして作られた衣服ではなく、肌ざわりの良いワンピースをパジャマとして使っているのが、長見さんが夜の時間を自分らしく過ごすための秘密です。

「三重ガーゼのワンピースは軽い着心地で、洗えば洗うほど柔らかさと風合いが増し、かれこれ10年以上は着続けていると思います。

とはいえだんだんと色は落ちていくので、定期的に自分で色を染め替えています。藍染めを趣味にしている友人に手伝ってもらって、草木染めや藍染をしたことも(長見)」

ピンクや薄紫、藍など、自分の好みの色に染め替えつつ、長く着続けているふわふわのワンピースのパジャマ。

入浴後、メイクオフして心も体もリセットされた時間帯も、どこか背筋をピンとして過ごせそうです。

読書やヨガでリラックス。ゆったりとした気持ちでベッドへ

腰を痛めたことをきっかけに、一年半ほど前から始めたヨガ。週に一度レッスンに通うほか、就寝前に簡単なヨガをするのが日課になっています。

「呼吸法をとても大切にしている先生から習っているため、普段から複式呼吸をとてもよく意識するようになりました。

お腹がぺたんこになるまで息を吐ききって、ゆっくりと吸う。それを繰り返すことで気分がすっきりします。ヨガを日課にすることで、よく眠れるようになったし、翌日の目覚めもよいです(長見)」

時間があれば猫をなでながら読書をして、長見さんはベッドへ。灯りをぱちんと消したときが、長見さんの一日が終わる合図です。

自分も周囲も、手間暇をかけることも大切にしながら毎日を過ごす

休日は、お母さまと一緒に近隣の温泉地をたずねたり、会社や近所の方に配る料理やお菓子作りに精を出すことも多いという長見さん。

「誰かのために、と考える時間も大好きなんです。ご近所のあの人がお好み焼きが好きだから、今日はたくさん焼こうかな、とか。旬な食材がたくさん手に入ったから、蒸しパンの具材にして会社のみんなに明日配ろうかな、とか。

暮らしている町や人が好きなので、自治会の副会長や民生委員の役を担うなど、積極的にまちづくりにも参加しています(長見)」

じつは、洗濯機は全自動式ではなく二槽式がお気に入りで、山水を引いて手動で大切に使っているそう。数年前まで薪でお風呂を沸かしており、いつか薪風呂に戻したいという気持ちもあるのだとか。

自分の好きなことにはしっかりとこだわりを持ち、周囲のことも絶えず考え続けている長見さん。

たくさんのことを大切にしているように見えるのに、それぞれのシーンで時間をていねいに使えている理由は「やらないことを決めている」からかもしれません。

「ネットサーフィンや、SNSを1日のうちに何度も繰り返しチェックすることは、人よりも少ないと思います。

それよりも目の前にいる人や愛猫との暮らしを楽しんだり、四季の移り変わりを眺めている方が豊かな時間の過ごし方だと思うし、好きなんです(長見)」

取材を終えて 〜編集後記〜

手間暇をかけて暮らすことや、それを慈しむ心の余裕があることが、毎日を充実させる秘訣のよう。

私たち編集部の目には、その意識が暮らしを整えることにつながり、肌の美しさにも影響しているように見えました。

みなさんは、どんな風に夜の時間を過ごしていますか?

長見さんのこだわりの日傘を眺めながら、そろそろ紫外線対策もしっかり行わねばと気を引き締め、取材を終えた『めづる』編集部です。

長見早苗

島根県・石見銀山の大森町生まれ。1994年(有)松田屋(当時の社名)に入社。入社当初から企画製造に携わり、現在はブランド部・登美で生産管理を担当。休日の楽しみは大好きな料理を作り、ご近所に配ること。

ライター

伊佐 知美
1986年、新潟県出身。「登美」ブランドで起用されている「マンガン絣」の産地・見附市が実家。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集長・フォトグラファーとして、日本全国、世界中を旅しながら取材・執筆活動をしている。著書に『移住女子』(新潮社)。

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