僕が撮影している写真のテーマのひとつに高山植物がある。
長年、山登りを続けているうちに、山で出会う花たちにも興味を抱くようになった。
高山植物の仲間は、女王のようにひとり凜と花を咲かす種もあれば、人気女性ポップ・グループAKB48のように可愛らしい花を一斉にたくさん咲かせる種類もある。
植物の花なのに、まるで美しい女性たちを見ているかのような気持ちにしばしば陥る。
日本の高山植物の元をたどると、それは今よりずっと寒かった氷河時代に北極に近いシベリアやアラスカなどの寒冷地から、その頃陸続きだった日本へ南下してきた北方系植物の生き残りである。
氷河期が終わって気候が温暖化してくると、北方系植物たちは日本よりも寒冷な北に帰りたがった。ところが、暖かくなったことで海水面は上昇し、日本と大陸の間には日本海ができた。
海に阻まれてしまったので、橋でもないと北方系植物たちは北極の方に戻れない。暖かな日本で生き抜くために、彼女たちは寒冷な高山や北海道に移動したのだった。