大原の築百年の古民家に移り住んで、家や庭に手を加える日々が続いたが、ぼちぼち僕のライフワークである山登りに行こうという気持ちが募ってきた。
この家と最初に出会ったときに、この家を通して新たな世界が開けそうな予感がしたと前にも書いた。
僕にとって、新たな世界とは写真を通して生きる道を探るということだ。その頃僕はインド料理店をやって生計を立てていたが、ほんとうはプロカメラマン、かつ芸術作品をつくる写真家で生きていきたいと模索していた。
僕の写真のテーマは山や自然、そして登山である。好きで山に登るだけでなく、写真を撮るためにも僕は山を歩き回らなければいけない。そして、その時期がようやく来たのだ。