石見銀山の梅の花から発見された「梅花酵母」。この自然酵母と島根県産米を使って、石見銀山生活文化研究所オリジナルの純米原酒、梅酒をつくってくださったのが、松江市で創業以来100年以上の歴史をもつ「米田酒造」さんです。
今年で、4回目を迎えた梅花酵母仕込みの酒づくり。出来上がった今年のお酒は、花のような香りとマスカットや柑橘を思わせる果実味がある、フルーティで華やかな味わい。簡潔に言うと……すごく美味しい!!
この純米原酒へのときめきを胸に、梅花酵母事業を担当する久保田が、杜氏の上濱さんと、蔵人の斎藤さんにインタビューさせていただきました。
久保田 一口飲んで、びっくりしました。去年のお酒もほのかな酸味のある甘口でしたが、今回のお酒はさらに、際立って特徴的で。
甘酸っぱくマスカットのような味わいがあって、良い意味でいわゆる日本酒という感じではないですよね。それでいてすごく飲みやすくて、どんどん飲みたくなってしまうという…。
上濱さん 梅花酵母の特性として、ワインに似た爽やかな酸味があるのですが、今年は「これぞ梅花酵母のお酒」と言えるお酒になりましたね。お酒の味を決めるにあたっては、「梅の花」を彷彿とさせる味わいにしたいと思い、完全に官能試験で決めました。もろみを飲んで、「よし、今日だ!」と思った日に搾りました。
本当は、もう少しアルコール分を高くしたいと思っていたのですが、甘酸っぱさの美味しいところを狙ったら、12.8度と低めのお酒になりました。
久保田 アルコール分12.8度は、日本酒としても低い方ですか?
上濱さん 低いですよ。このお酒は原酒なので加水していませんが、加水するお酒でも12.8度までは下げないですね。
久保田 完全に味わい重視で決められたからこそ、この度数なんですね。でも、私も含めて…お酒が弱い人はすごく嬉しいです。加水していない原酒なのに、ストレートで濃いまま飲めますね。
久保田 そして、この「甘酸っぱさ」というのは、数値としてはどのくらいだったのでしょうか。
上濱さん 日本酒度がマイナス31度、酸度が4.7度、アミノ酸度が1.5度ですね。一般的には、日本酒度がマイナス域で甘口ですからね。そして、酸度も1度から2度程度が普通なのに、1.5倍程。かなり際立った数値がでました。
久保田 数値だけ見ると、かなりの甘口ということになりますね。でも、べたつきや甘すぎる感じは全然なくて、爽やかな味わいですっきり飲めるんです。
上濱さん 日本酒度が低い分、酸度が高いので、甘すぎずに味のバランスがとれました。また、アミノ酸度が高いと濃厚になるのですが、やや低いのですっきりした味わいになったところもあると思います。
久保田 この味わいは、絶妙なバランスで成り立っているんですね。
上濱さん そうですね。そして、際立った数値ではありますが…数値はあくまで目安なので、自分の舌で味わいを感じてもらえたら嬉しいですね。
久保田 低いアルコール分で原酒を造ると、管理をしっかりしていても、発酵が止まってしまったり、香りが変わったりとリスクが沢山あるので、酒造りがとても難しいと聞きました。今回の酒造りはいかがでしたか?
上濱さん やはり、とても大変でした(笑)
斎藤さん 梅花酵母は、自然酵母の特徴なのか、発酵がとてもゆっくりなんです。毎日毎日「いつ本気を出して発酵してくれるのか?」と思いながら、確認していました。ゆっくりでも、ちゃんと発酵してくれてよかったです。
上濱さん ガスは一丁前にあがるのですが、ガスがあがる割りには、発酵はゆっくりなんですよね。
温度が下がると発酵がとまってしまうので、今回は初めてや電気カーペットを使いましたよ。
久保田 電気カーペット、ですか!?
上濱さん はい。底冷えしないように敷きました。タンクは普通、底には直接置かずに石等をおいて、底との間に空間をつくります。今回は保温マットをタンクに巻き、さらに電気カーペットをひいて、温度が下がらないようにしていましたね。
斎藤さん 温度をキープさせるために、毎日何度も確認して、下がってきたかなと思うと、電気カーペットをつけて。発酵の具合を見ながら管理する温度を常に調整していました。
久保田 ちなみに、電気カーペットを使ったのは梅花酵母のお酒だけですか?
上濱さん そうなんです。どのお酒にも、愛情を注いで造っていますが、梅花酵母のお酒は特に、寒くないかな、調子はいいかなと、本当にずっと気になって。
久保田 こんなに大切に育てられて…本当に手のかかる子どものようなお酒ですね。
上濱さん 梅花酵母のお酒は、日本酒を普段あまり飲まない方にも楽しんでいただけたらと思っているんです。フルーティーな味わいは、和食に限らず、食材の味を活かした色々なお料理に合うと思いますよ。
斎藤さん おちょこで飲むだけではなく、ワイングラスで香りの広がりを感じたり、ロックできりっと冷やした口当たりを楽しんでもいいですね。炭酸水で割って柑橘類を搾ったカクテルにするのも美味しいです。
久保田 幅広い楽しみ方ができると思うと、すごくわくわくします。日本酒のカクテル、やってみたいです!
斎藤さん 梅花酵母のお酒は甘酸っぱいので、柑橘の香りと合いますし、原酒ですから炭酸と割っても水っぽくならずに楽しめます。また、マスカットやブドウなどを浮かべても美味しいですよ。
久保田 お酒自体がマスカットのような香りがするので、確かに合いそう! 炭酸がはじけて、シャンパングラスで飲んでも美味しそうですね。梅酒は、ソーダ割りやロック以外に何か楽しみ方はありますか?
斎藤さん これからの季節は、ホット梅酒が良いですね。
久保田 なるほど、寝る前に飲むと体が温まって良さそうですね。
上濱さん 今回の梅酒は2年熟成ものです。梅花酵母の純米原酒でつくっているので、口当たりがよく飲みやすいですが、熟成されてさらにまろやかになりました。
久保田 昨年の発売時から、美味しくて気づいたらすぐに終わってしまう!と好評いただいていました。まろやかでさらに美味しくなった梅酒、これは楽しみです。
上濱さん 純米原酒も梅酒も、梅花酵母のお酒は自由な感覚で飲んでもらえると嬉しいですね。
梅花酵母の魅力をもっと引き出して、その可能性を追究していきたい!
その想いで米田酒造さんに毎年つくっていただいている梅花酵母の純米原酒と梅酒は、とても自由で新しい、日本酒の楽しさを教えてくれます。
インタビューの中で、「このお酒を飲んで、すごくわくわくしたんです!」とお伝えしたら、「その感覚を大切にしてくださいね」と言ってくださった上濱さん。
大切につくられたこのお酒、日々の楽しみに、適量いただきます!
最後に、上濱さんと斎藤さんに教えていただいた、おすすめレシピを公開します。