『吉田菜純』の場合|三浦類の職場放浪記⑤

三浦編集長が群言堂スタッフを紹介する「三浦類の職場放浪記」、今回ご紹介するのは群言堂東京事務所で営業をしている吉田菜純(よしだ・なずみ:通称「なっちゃん」)さん。2015年8月の取材時はJR中央線・高尾駅北口改札前にあるカフェIchigendoで店長を務めていた。なっちゃんは群言堂の本拠地である大森町の出身者。クールなのか三浦のことが苦手なのかあまり口数は多くないが、粘り強く取材し大森っ子の目から東京、そして今の大森がどう見えるのか伺った。


なっちゃんは1988年2月、4人兄弟の2人目の長女として出雲市で生まれた。当初は父親が美術教員だったため大田市の教員住宅に住んでいたが、5歳の時に大森町に引っ越した。ちなみに父親は教員の他に鉄の彫刻家でありお寺のお坊さんでもある吉田正純氏。群言堂とも関係が深い。

大森幼稚園に年長で入園し、小学校は大森小、中学は隣町へ行き、高校は松江の女子高に通った。

高校卒業後は興味のあったものづくりを学びたいと、奈良芸術短大の染織コースに進んだ。その後、父や群言堂の松場大吉のつてで兵庫県篠山市にある子どもの体験型ミュージアム「篠山チルドレンズミュージアム」に縁があり、就職することになった。ワークショップなどを担当し、子どもたちとものづくりを楽しんだ。

篠山で働いて2年ほどが経ったとき、突然松場大吉にスカウトされた。2010年3月に高尾にオープンするカフェで働いてみないかという誘いだった。

JR中央線高尾駅北口の木造駅舎。正面右側がIchigendo

最初は断った。もともと東京は母の実家があったので度々行ってはいたものの、人が冷たい感じがして、住むべきところではないと感じていたからだ。

しかし、それまではどこに行っても父の知り合いが周りにいる環境だったこともあり、いつか誰も自分のことを知らないところに行ってみたいという思いもあった。最終的には何事も経験と思い、何も期待せずに行ってみよう、と上京を決めた。

高尾近くの西八王子に部屋を借りて始まった東京生活は、毎日目まぐるしいほど忙しかった。

オープンに向けての準備もバタバタだったが、オープンしてからはとにかく休む間もなく働いた。店が駅の改札横にあるので、ありがたいことに通勤や高尾山、高尾の霊園を訪れるお客さんで毎日賑わった。

3年目には店長を任され、キッチンからホール、駅・JRとのやりとりやシフト管理、採用まで幅広い仕事をこなしていった。今年で6年目になるが、インフルエンザでダウンした時以外、3日以上連続で休んだことはない。

休日は特段用事がなければ外出することもなく、自宅に籠って映画を観ていることが多い。父親譲りの映画好きだが、観るのはマニアックな映画が多いので友人とはあまり話が合わない。

映画を観たらいつも父親に電話する。すると、どんなマニアックな映画でも知っているので、いくらでも話に花が咲くのが嬉しい。両親とは多いときは二日に一回くらいのペースで電話をするほど仲良しだ。

家族と同様に大森の町も大好きだが、今は帰るつもりはない。

実は働き始めて一年目、東京暮らしがやっぱり苦痛だったので、そのうち大森に帰ろうと思っていた。

その矢先に震災が起こり、思わぬ形で大森に呼び戻された。しばらくの間は群言堂本店で働くことになったが、実際に大森に戻って働いてみると、大森と自分の関係が以前とは変わっていることに気が付いた。

それまでは実家のある、帰る所としての大森があったが、今はそれと同時に職場のある場所でもある。しかも実家から歩いて数分の通勤距離だ。あまりにもメリハリのない生活を経験して、ここで働くことは無理だと悟った。それ以来、大森に帰るのは隠居する時でいいと思うようになった。

高尾駅北口改札を出てすぐお店の入り口がある。

たとえ大森から離れて働いていても、いつも大森は身近に感じている。

群言堂のお店に常に大森の雰囲気が漂っているおかげもあるのかもしれないが、今も家族や知り合いがたくさん大森周辺にいて、新鮮な情報がいつでも入ってくるので大森にいない気がしない。そのことがとても励みになっている。

一方で、嫌いだった東京の面白さにも気付いた。人がたくさんいる分、毎日いろいろな人との出会いがあることだ。

いきなり無茶な仕事を頼まれたり曖昧なことの多かったりする会社だが、予測不可能で飽きない面白さがある。5年後に一体どうなっているのか、この目で見るためにも、まだまだこの会社で働き続けたいと思っている。

この10月(2015年)に異動になると言われているが、未だに何をすることになるか知らされていないのがうちの会社らしい。今度はどんな仕事や環境が自分を待っているのか、そこでまた新たな自分を発見するのが楽しみだ。

その後営業管理部に配属され、現在関東店舗の営業を任されている




<おわり>

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書き手:広報課 三浦

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