遊びは大事

踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら…は阿波踊りのセリフだが、これを我社にあてはめて言い替えれば、遊ぶ阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら遊ばにゃそんそん。

今風に言えば、超厳しいこのご時世、月に一度の経営会議は深刻そのもの。入るお金が減れば出てゆくお金を減らすしかない。

「経費節約!! これしかない」 今年は忘年会も自粛しようということになった。



しかし、そうは言ってもこの一年、みんなよく頑張った。若手のマサシ君が音頭をとって、鄙舎でささやかな慰労会を企画してくれた。

キムチ鍋、近所で拾った銀杏のおつまみ、それにジャスコでヒットしているというチーズフォンデュ。

この際、メニューの取り合わせがどうのこうのの贅沢は言えない。



つつましい会食ではあるが、お酒も入ってあちこちで笑い声も聞こえ、ほのぼのとした雰囲気が鄙舎に充満してきた頃、突然 「所長、前へ出て下さい。」 とマサシ君に指名された。

「私、芸のない女だから歌も唄えないよ」 とブツクサ言いながら出てみると「それでは所長の還暦祝いを…」 と言うやいなや、ショップから営業部から企画部から次から次へと赤いバッグに赤いおサイフ、シャネルの真っ赤なマニキュア、赤いケーキに記念樹やらのプレゼント。

突然のサプライズに動揺しながらも、みんなの気持ちが嬉しくてウルウル涙腺が緩んで感極まった時、手渡されたカレンダーに感激の涙は一転して笑い涙に。

記念カレンダー 5月の写真

松場登美、生誕60周年記念と書かれたカレンダー、特に五月のページは涙が出るほど笑いすぎて、さすがの三段腹の皮もよじれた。

「ラッピングがすてき、センスあるじゃん、おしゃれやわ」 「カレンダーおもろいわ、これ売れる、売れる」 とはしゃぐ登美。登美は興奮したり理性を失うと関西なまりの三重弁になる。

しかし、トドメのセリフは、 「あんたらなんでこれが仕事に活かされへんの。いつも言ってるやろ企画は遊びが大事やて、真面目はいかん作り手が遊んでない仕事は人の心に届かんのや」



言いながら登美は自ら反省した。「私も遊びが足らん。噂によると、大吉っあんは陰で結構遊んでいるらしい」私も遊ばにゃそんそん。

「それにしてもみんな遊びすぎや、それ仕事に活かしてよ、頼むわ」

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