「雨と休日が届けているのは、聴く人を通過して、その先にできるものなんです。
アーティストが奏でる音だけ、じゃなくて聞き手がどういう気分になるかということ。」
2013年11月3日に開催したライブイベント「休日、石見銀山へ」にて、
群言堂と一緒にこのイベントを開催していただいた西荻窪のCDショップ、雨と休日さんをご紹介します。
※現在は実店舗はなく、オンラインストアのみの営業をされています。
「雨と休日が届けているのは、聴く人を通過して、その先にできるものなんです。
アーティストが奏でる音だけ、じゃなくて聞き手がどういう気分になるかということ。」
2013年11月3日に開催したライブイベント「休日、石見銀山へ」にて、
群言堂と一緒にこのイベントを開催していただいた西荻窪のCDショップ、雨と休日さんをご紹介します。
※現在は実店舗はなく、オンラインストアのみの営業をされています。
西荻窪の商店街の一角、果物屋さんの斜め向かいに、雨と休日さんのお店がありました。
いわゆるCDショップというと、棚にはぎっしりとアルバムが並んでいるイメージがありましたが、
雨と休日さんが店頭に並べているのは常時70枚ほど。
このお店の在り方はどのようなところから生まれてきたのでしょうか?
店主の寺田さんがブログに書いている雨と休日を作ろうと思った最初の思いを読んでみると、
雨と休日さんの全てが詰まっている気がしています。
雨と休日は、「穏やかな音楽を集める」というコンセプトでセレクトされたCDショップ。
CDを売る、ということを真剣に考えた末にできたのが、このお店です。
雨と休日の店主、寺田は、10年間大手CDショップに勤めていました。
そこでは毎週何十枚と発売される新譜を右から左へ流れ作業のようにこなす日々が続きました。
ある日、すでに何十枚と売っている商品について熱く語るお客様に出会いました。
「このアルバムのここが良いんですよね。」と語るお客様に対し、
店主はそのアルバムの内容についてそこまで詳しく知らない、ということに気づきました。
もうすでに何十枚と売っているにも関わらず…。
その時から「責任を持ってCDを売る、ということはどういうことだろう」と考えるようになりました。
CDはプラスチックと紙と少しの金属でできた代物ですが、
ひとつひとつが単なる「商品」ではなく「作品」なのだと、
当たり前のことをあらためて思い知ったのです。
CDを販売する商売として理想とはどういうものだろう。
扱う作品の全てについて、十分な知識を持っているべきであるし、
正当な評価と正当な価格で一枚一枚を丁寧に紹介すべきであると考えました。
(一部抜粋 全文はこちらから)
店内にゆったりと並べられたCDには全て寺田さんのコメントを書いたカードが添えられている。
-雨と休日がオープンした2009年は世間でCDは売れないと
言われ始めた頃でもあるそうですね。
「そうですね。実際にCDの売上が減り始めたのはもう少し前からだと思います。
そんな中でよくCDショップを始めましたね、とも言われるのですが、
まだ売れるという確信めいたものが自分にはありまして。
確かにお店を始めた時はホントに売れるかどうかわからなかったんですけど、
4年続けられているということで、反応がしっかりとあることを実感してます。
一般的なCDショップには、業界の慣習でCDはジャンルごとに並べられていて、
そのジャンルの違いを知らない人にとってはどこに何があるかわからないし、
上手く自分が欲しいものにたどり着けない。
CDショップに足しげく通ったりしない多くの人は
『ジャズを聴きたい』と思ってまっすぐジャズを買いに行く訳じゃないと思うんです。
もっとあいまいな『こういう感じのものを聴きたい』って気分がまずあって、
それがたまたまとあるジャンルの作品だったという流れなんじゃないかと。
雨と休日は『穏やかな音楽』というコンセプトだけで作品を選ぶことによって、
そのたどり着く距離を短くしたいんです。」
雨と休日さんの店頭とネットストアでは全てのアルバムを視聴することが出来ます。
あるアーティストのCDが100万枚の売り上げを達成したというニュースは
そう珍しい訳でもないのですが、自分自身の事をかえりみると、
CDを最後に買ったのは何年前だろうかと、すぐには思い出せないほどでした。
理由はいくつか思い浮かぶけれども、決して音楽が嫌いな訳ではなく
「良い」音楽がある事で良い時間になるというのはすごくわかります。
でもその曖昧な「良さ」を、誰にどうつたえたら出会えるのかわからないまま、
その音楽に辿り着けず、随分時間がたってしまっていました。
もっと早く雨と休日さんに出会えていたら…。
ーお客さんにこういうお店欲しかったっていわれませんか?
「そうですね、僕もですって応えた事あります。(笑) 僕もそう思っていましたから。
雨と休日というのは一人のリスナー、一人の音楽好きなんです。
なにか肩書きがあるわけではないし、資格があるわけでもない。
一人の音楽好きの人間が選んでいるんです。」
店主の寺田さんとゆっくりと話しながらお客さんはCDを選んでいく。
「僕が考える、知らない音楽に出会う理想というのは『友達に教えてもらう事』です。
親しい友達なら『あいつがすすめるんだったらおもしろそう』というように、
例え結果的に自分の好みじゃなかったとしても、既に音楽との結びつきの種がある。
雨と休日が良い作品を紹介できて友達に近い存在になって、
それを読んだり聴いたりして喜んで手に入れる人がいることに関われたなら
自分が役に立ったと思えて嬉しいです。」
「その為にも雨と休日は、『選ぶ』ということがもっとも重要な仕事だと思っています。
商品を厳選しているので、たとえば同じアーティストでも
お店においてある作品とそうでない作品があったりします。
作り手側よりも買い手側に近い立ち位置のお店といえると思います。」
「お店が西荻窪にあるというのも重要だと思っています。
東京の中央線沿線の駅って街ごとにキャラクターがあるんです。
西荻窪にあるというのも、雨と休日の全体の空気の一つ、キャラクターの一部なんです。
隣駅の吉祥寺のような繁華街だともっといろんな人が来ちゃって、
今のお客さんとの 距離感で関われない。」
「自分が一番盛り上がるのは、これは本当に素晴らしい作品を仕入れたなって思う時です。
箱をあけた瞬間にずらっと並んでいるこのCDをお客さんに紹介できるぞっていうのが。
売れて行ったCDの向こう側に、聴いて良いって思ってくれる人がたくさんいる。
そういう作品を紹介できる時が、お店をやっている原動力でもあります。」
お店に届いた新しいCD達
「ある音楽を聴いて、イメージが膨らむものが好きです。 音楽が生み出すプラスアルファのあるもの。
例えばある牧歌的な音楽があってその曲を聴くと、
行った事もないけどイギリスの草原が頭の中にイメージできたり。
コーヒーが美味しくなりそうな音楽であったり、 そういった気分に寄り添う音楽であること。
音楽がその場にあることで気持ちが豊かになったり、
賑やかな音楽ならへとへとになるまで踊りたくなったり。
どういう気分になるのかという部分は自分がいままで経験してきた事を反映しています。
自分が楽しいのならみんなもきっとそうだよねという。
音のディティールも全体の雰囲気を作ることにとって大切なのはもちろんですが、
音だけじゃなく、聴く人を通過して、その先にできるものが雨と休日にとって大切なんです。」
お客さんの手元に届くのを待つCD達
こういう音楽が欲しいと思っている人がいて、でもそれがどこにあるかわからない。
その人にその音楽を届けられる、欲しいと思う音楽が手に入れられる。
膨大な情報があふれる今の時代だからこそ大切な仕事だと思います。
考えてみるとヒットチャートを賑わすミリオンセラーのCDを
日本人の約1%もの人たちが買っているというのもすごい事ですが、
雨と休日さんは私の様な残りの99%の人の日常と音楽の関わり方を
提案してくれるお店なのかもしれません。
雨と休日さんの7周年イベントとして、今回Re:gendoにて出張店舗を開催いたします。
詳しくは下記の画像をクリックしてください。
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