「人生で今が一番若い時」とはよく言われることだが確かにこれから若くなることはない。
衰えを傍らに一刻一刻、確実に老いてゆくのだ。
私は今年還暦を迎える。尚更に実感が増す。
しかし、老いることを否定的にとらえている訳ではない。
むしろ最近の私は年を重ねることによって、知り見えてくることに興味津々なのだ。
40歳では見えなかったことが、50歳にして見えてきた。
さて、60歳にはどんな世界が見えてくるだろうと考えるだけでわくわくしてくる。
また、学ぶことの楽しさをこの歳になって知り始めた。
もっと早く気付いていれば、もう少しはましな人間になれていたかも知れないと思うが・・・
最近、大吉っあんの部屋で五木寛之氏の「林住期」という本を見つけた。
何気に開いて読んでいるうちに引き込まれてしまった。
表紙の帯には「女も旅立ち男も旅立つ林住期」とある。
今わの際の臨終期ではない。
ここで言う「林住期」は、むしろ人生のクライマックス絶頂期だと書いてある。
古代インドでは人生を四分割にして、生まれてから25歳までを「学生期」(青春)、
それから25年毎に「家住期」(朱夏)、「林住期」(白秋)、「遊行期」(玄冬)と位置づけた。
この説にあてはめれば今、正に私達夫婦はこの林住期、人生の絶頂期にあると考えられる。
町内別居をして四年になるが妻としてこれでいいのだろうかと思わないでもなかった。
松場家のご先祖様に申し訳ないとも。また、夜中に大吉っあんに何かがあった時、
そばにいないことで手遅れになってしまうかもという不安がないでもなかった。
そんな気持ちを吹っ切ってくれたのがこの本だった。
「よく男女間の友情は成立するかなど青臭い議論がおこる。
しかし、夫婦というのはそれが成立する希な関係だと私は思う。
生涯恋人同士というよりは、他に二つとない友情を育ててゆくことが好ましいのではないか。
自分を見つめる季節が林住期ではない。相手を見つめ、全人間的にそれを理解し、受け入れる。
林住期には、恋人でもない、夫でもない一箇の人間として相手と向きあう。
それが可能ならバラバラに暮らしてもいいのではないか。
林住期とは男だけでなく、女も旅立つ季節なのである。」 五木寛之 林住期より
林住期とは、もっとも輝かしい第三の人生のことらしい。
この本を読んでどれほど勇気づけられたことだろう。
家を出たことを後ろめたく思わないですむ。
他人がこのライフスタイルをどう見ようが、自分自身が納得ゆく答えが得られた。
ぜひ、おすすめしたい一冊である。
家出(別居)とは人聞きが悪いが、
精神的出家のことを意味することであると五木氏は書いている。
登美