気に入って繰り返し着るうちに傷んでしまったお洋服がどなたにもあると思います。
いろいろな思い出のあるお気に入りをより長く使い続けることができたら、持ち主にとっても、そのお洋服にとっても幸せなことです。
お気に入り相談室はそんな時にお客様のお力になれるよう、修繕やリメイク、染め直しなどのご提案をしています。
今回「捨てられなかったコート」のご相談をしてくださったのは東京都ご在住のT様。
最初のお問い合わせは2021年8月27日のことでした。
気に入って繰り返し着るうちに傷んでしまったお洋服がどなたにもあると思います。
いろいろな思い出のあるお気に入りをより長く使い続けることができたら、持ち主にとっても、そのお洋服にとっても幸せなことです。
お気に入り相談室はそんな時にお客様のお力になれるよう、修繕やリメイク、染め直しなどのご提案をしています。
今回「捨てられなかったコート」のご相談をしてくださったのは東京都ご在住のT様。
最初のお問い合わせは2021年8月27日のことでした。
窓口を担当したのはお気に入り相談室の長見(ながみ)でした。大森町が地元のベテランスタッフです。
長見早苗(ながみ・さなえ)
島根県大田市大森町生まれの生粋の大森っ子。1994年(有)松田屋(当時の社名)に入社。入社当初から企画製造に携わり、登美ブランドの生産管理を経て現在お気に入り相談室を担当。休日の楽しみは大好きな料理を作り、ご近所に配ること。
T様からご相談をいただいた商品は、以前作った群言堂「登美」ブランドのコート。
八王子市にあった今はなきメーカーさんによる生地であることをお伝えすると、
「貴重なものを捨てなくて良かった」とT様。
お送りいただいたコートを拝見すると、本当に大切に着ていただいたことが伝わってきました。
長見は一つ一つのほつれ、擦れなどから気に入って着ていただいていた様子を想像しながら、T様とコミュニケーションをとっていきました。
最近、都内でお引っ越しをされたばかりとのこと。メールでのやりとりの中ではご実家が島根県であること、コロナ禍で遠方の母と会えない不安やお悩みもお聞きしました。
実家が島根県安来市で高齢の母がいます。気になりますが帰省しにくい状況です。石見銀山に行ってみたいと思いつつ、機会を逃しております。深呼吸をしに、島根へ還りたいです。
もともと身長があまり高くないというT様は、コートの丈と袖丈が長かったのと、リュック派だったため、布がかなりすれてしまったそうです。
また、アフリカのバッグも愛用していて、肩掛けした時に布がすれてしまっていることなどもお聞きしました。
長見がコートに関する思い出を伺うと、次のようなお話をしてくださいました。
あのコートの思い出は、旧国立競技場です。
小学校3年か4年生だった長女は、「調べ学習」が大好きな子でした。
国語でしょうか社会だったでしょうか、教科書に載っていた
「東京オリンピックを機に開発されたピクトグラム」について興味を持っていました。それならばと、旧国立競技場の中にあった、秩父宮記念スポーツ博物館に電話したところ、お話を聞かせていただけることになり、長女の同級生とそのママと担任の先生と日曜に出かけたのでした。
当時、国立競技場及び、併設の博物館は、すでに取り壊しが決まっていたのでしょうか? 休館日だった館内を、館長自ら(電話に出られたのが館長だったみたいでした)案内してくださって、英語圏以外で初の開催となった、1964東京オリンピック大会で、オリンピック史上初の試み、絵で案内できる「ピクトグラム」を開発したこと、過去他国で開催されたポスターと、それに比べて遜色のない、1964東京オリンピックのポスターを見せていただきました。東京の、日本のデザインの力を認識できた見学でした。
長くなりましたが、その時、あのコートを着て行ったことを強く記憶しています。「私は行けないけど」と、お子さんを駅の改札に連れてきてくれたママが「すてきなコートね」とほめてくださって、うれしかったです。
あのコートをリメイクしていただけたら、新国立競技場や、北の丸公園、日本武道館のあたりを散歩してみたいな、と思っています。生地を傷めないバッグを持って。(笑)現在、東京で小学校の教員になっている長女も一緒に。
素敵なエピソードを寄せていただき、長見も張り切ってリメイクのご提案を考えました。
T様からは「コート」とこだわらず、上着でもベストでも良いが、衿のデザインはとても気に入っているので、同じ衿のデザインになると嬉しいというご要望をいただいていました。
そこで9月2日、長見からご提案したのは、お散歩の時にご着用いただけるベストとミニ手提げでした。
T様にもご快諾いただき、早速リメイクにかかりました。
そうして約3ヶ月後、出来上がったのがこちら!
ご要望のあった衿のデザインはそのままに、擦れてない箇所、後身頃などを使ってベストのパターンを作りました。
ポケットは切り替えて横地の目にしています。
お気に入りの生地感を活かして生まれ変わりましたが、果たして気に入っていただけるでしょうか。
そしてもう一点、残った小さな端切れを使用して作ったミニ手提げもとても可愛くなりました。
コンパクトでちょっとしたお出かけにぴったりなサイズ感です。
少しお時間をいただきましたが、9月2日にリメイク内容が決定してからおよそ3ヶ月後の11月30日、長見からのお手紙とともにT様にベストと手提げをお送りしました。すると早速T様から喜びのメールが。
受け取りましたよ!
わーいわーい、手紙も含めて大感動です!(中略)
捨てるもの、捨てられないもの・・・コロナと引っ越しで相も変わらず断捨離の日々ですが、リサイクルショップでも引き取ってもらえなかったモノにこそ、存在意義があるような気がして愛おしいです。
モチロン、このベストとバッグも大切に使わせていただきます。
感謝をこめて安来の先輩、河井寛次郎の詩を紹介した生地、じゃなかった、記事を送ります。
私、河井寛次郎の作品、というより「感じ方」「見方」が好きなのかもしれません。
陶芸作品以上に、文に惹かれます。
長見さんとは、いつかどこかでお会いできる気がします。
寒くなりました。大田に雪もふるかな?お元気で。
関係者のみなさまに、よろしくお伝えください。
メールと一緒にご着用くださったお写真もお送りいただき、担当した長見の感激もひとしおでした。
T様のコートのリメイクを通してお客様とスタッフという関係以上に心が通うやりとりができ、お客様相談室の存在する意味を強く感じさせられました。
これからもお客様の大切なお気に入りと出合うのを楽しみにしています。
今回掲載事例としてご協力いただいたT様、本当にありがとうございました。
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