伝統あるモノ作りを次世代に継いでいきたい【登美 × 静岡県浜松市・古橋織布】第3回

2017年 6月

「綿ローン祭」の開催にあわせ、ウェブで全3回のコンテンツをお届けしてきた今回のプチ特集。 最後となるこの記事では、古橋織布のこれからについてお話させてください。

じつはこの数年で、古橋織布のモノ作りの姿勢に共鳴する若い世代の人材が集い始めているのです。


登場するのは、6年前に入社した濱田美希さん、古橋織布の娘さん(西井進・佳織理)ご夫妻。この3人がゼロから作った「oriya」という古橋織布の新しいブランドです。そして最近入社した府川容子さんが新しく仲間入りしました。

左から、古橋織布の府川容子さん、西井進さん、西井佳織理さん、濱田美希さん

この伝統と技術を私も継ぎたい

専門学校でテキスタイルを学び、全国の産地を自分の目で見た後に、「伝統と技術ある古橋織布で働きたい」と入社を決めた濱田さん。

とにかく織物と職人が好きで、古いものを大切にし続ける古橋織布で働く毎日が大好き。6年間の静岡暮らしを経て、学生時代を過ごした東京よりも静岡が居心地がよくなっています。

古橋織布の娘の佳織理さんは、大学を卒業した後、大阪の鉄鋼業で働いていました。

小さな頃から繊維産地で育ち、工場も毎日見ていたため、家業が特別なことだとは意識せずに静岡を離れたそう。

ところがある日、母親に海外からの発注メールを翻訳してほしいと依頼され、実家が想像以上に世界に開かれた取引をしていると知ります。

もともと語学と海外が好きで、日本のモノ作りを世界に伝えたいという想いを持って働いていた佳織理さん。「FURUHASHI」の呼び名で海外からの発注も多い古橋織布の事業展開が、新鮮で魅力的なものに映ったそう。

そして同じ企業で働いていた旦那さんとの結婚など、タイミングが重なり2人で実家に戻り、古橋織布で一緒に働くことに。

佳織理さんの夫の進さん

その後ひょんなことから入社することになった府川さんを迎え、平均年齢が60代以上だった古橋織布の平均年齢はぐっと下がり、社内の雰囲気も、工場の様子も変化しました。

新ブランド「oriya」の誕生

鮮やかなチェック柄は、いちご、ブルーベリー、みかん、メロンなど野菜や果物から染料をとるボタニカルダイという手法で染め上げています

濱田さんを始め、若い世代が抱いた疑問は、「こんなに素晴らしいモノ作りをしている場所なのに、どうして静岡の人たちはそれを知らないのだろう?」ということ。

地元でたくさんできた友だちや知り合いに、「織屋で働いている」「生地を作っている」と話しても、なかなか具体的な仕事のイメージを持ってもらえなかったそう。

浜松市が、遠州織物の産地であることをあまり意識せずに暮らしている人も多いように感じたとか。

「このままではいけない」「もっと多くの人に織物を身近に感じてほしい」と作り出したのが、新ブランドの「oriya」。おばあちゃんの家でとれた甘夏など、地元で収穫した野菜や果物の染料で糸を染め上げました。そして古橋織布の技術を使って生地に織り上げ、バッグに仕立てました。

若者のアイディアが詰まった浜松市発の新しいブランドは、年齢や性別を超えて、たくさんの人に届き始めています。

綿スラブローンの生産地の、新しい芽とともに

復古創新のテーマを掲げ、日本国内の様々な産地や作り手とともに歩んできた群言堂。 変わらない伝統とモノ作りを続ける古橋織布も、じつは少しずつ変化を積み重ねているようです。

「変わらない」のではなく、「少しずつ変化しながら、大切なことを伝え続ける」。

そのあり方は、古き良きものを再生し、今の時代と共存させようと考える復古創新の想いととても似ているように思います。

そんな古橋織布と群言堂が、時代を超えて残したいと願う服がずらりと並ぶ「綿ローン祭」。ぜひ一度、店頭に遊びに来てみませんか?

一度触れたら肌と心が喜び、もしかしたら明日からの価値観までも、少しずつ変えていってくれるかもしれません。

誰かの毎日をもう少しだけ幸せにするために、群言堂はこれからもこういった取り組みを続けていきたいと思っています。

このイベントは終了いたしました。

ライター

伊佐 知美
1986年、新潟県出身。「登美」ブランドで起用されている「マンガン絣」の産地・見附市が実家。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集長・フォトグラファーとして、日本全国、世界中を旅しながら取材・執筆活動をしている。著書に『移住女子』(新潮社)。

カメラマン

タクロコマ(小松崎拓郎)
1991年生まれ、茨城県龍ヶ崎市出身の編集者/カメラマン。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集部所属。

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